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 米田さんが刑事部長だったことは、本当に幸いだった。意見書を手渡して説明すると、

「これは面白い。重要だからすぐやろう」

 と言ってくれた。次の週には刑事総務課から問い合わせがあり、担当者にプレゼンした。それを皮切りに、実務で関連する捜査三課、鑑識課や科捜研、ヒト・モノ・カネで関係する人事、企画、施設、装備、会計、用度など、あらゆる部署へ説明に奔走した。

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 警視庁で新しい係をひとつ作るだけでも大変だ。内部で根回しを重ね、いろいろな部署を説得し、警視庁の組織として合意ができてから、さらに東京都に説明して予算を取らなければならないからだ。実際に業務をスタートするには人を集めなければいけないから、ほかの部署の人員を剝がしてこなければならない。普通は5年かかると言われたのも、もっともだった。

性犯罪事件を解決

「服藤が、捜査一課から独立した組織を作ろうとしている」という噂は、あっという間に広がった。理解を示し応援してくれる人もいたが、反対する者も当然現れる。

 しばらくして、ある管理官から、「服藤さん。あんたに頼むと何でも解決してしまうんだって? そしたら、これやってみてくれないかな」

 皮肉交じりで渡されたのは、性犯罪の概要だった。

 5年ほど前から杉並区と世田谷区で連続発生していた性犯罪で、捜査本部が設置されてしばらくすると犯行が途絶え、本部が一時閉鎖される。犯罪の再発生と共に、本部が再開される。それが5回も繰り返されていた。

 内容を精査し、間違いなく同一犯と思われる犯行をピックアップした。プロファイリングの事件リンク分析である。開発したばかりのDB‐Mapを活用して解析を行なうと、事件が発生する日の現場近くに必ず現れる車があった。そこから、埼玉県在住の男が浮上する。

 捜査本部はこの情報に基づいて捜査し、犯人を検挙した。わずか1週間しかかからなかった。私も驚いたが、捜査本部も驚いた。

©iStock.com

 しばらくして、別の管内で発生していた同種事件の依頼を受ける。こちらも数年にわたって、捜査本部が開設されたり閉鎖されたりしていた。しかし解析を進めてすぐ、葬儀屋に勤める容疑者に行き着いた。