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「突然手料理をごちそうするなんて無理があるのでは」としどろもどろになる野本さんですが、対する春日さんは冷静。一口食べて無言……と思いきや、スプーンを運ぶ手が止まらない! がつがつと料理に食らいつき、あっという間に皿を空にしてしまいます。春日さんの豪快な食べっぷりに、高鳴る野本さんの胸。

「ずっと探してたんだ/一緒におなべをからっぽにしてくれるひとを」

 こうして、“作りたい女”と“食べたい女”の、ともに食卓を囲む日々が始まるのでした。

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認知度が急上昇した「生理回」

 そして、この作品の認知度が一気に高まったのが、第4話の「この世に同じ女はいない」。この回で描かれたテーマは「生理」でした。

 せっかくの休日、料理を作る気満々だった野本さん。しかし、ちょうどやってきた生理のせいで、ベッドから起き上がることもできません。そんな野本さんに、春日さんから絶妙なヘルプが入ります。

 

「(ナプキンは)普段使ってるの何ですか」「痛み止めはどこですか」「食べたいものありますか」。生理用品一式に、さらには鉄分ドリンクまで買ってきてくれる。この細やかな心遣い。生理に苦しんだ経験のある読者には「ぐっ」と刺さるのではないでしょうか。

 

 “同じ女”だから、相手の辛さも分かってあげられるんだ! ……と言いたいところですが、実はこの話、そのようには描かれていません。生理の諸症状が重い野本さんに対して、痛みはまったくなく、さほど苦しい思いをしない春日さん。体の性別は同じでも、“同じ女”ではないし、他人の辛さは分からない。だから相手に尋ねたり、調べたりするしかない。春日さんの気遣いは、“違う他人”としての野本さんへと向けられたものなのです。

 

 さらに、毎月の生理に苦しみながらも「私ぐらいの辛さで行くものじゃないのかなあって」と婦人科の受診をためらう野本さんにも、作品の中では丁寧なフォローがなされています。

 この回では、本編の後にも「つらい症状がある人は婦人科を受診しましょう」という注意喚起のページが挿入されているのですが、これが作中の誠実な描写とあいまって、大きな話題を呼びました。

 生理の辛さ、ひいては“女”として生きる苦しさを「そういうもの」と流してしまうのではなく、正面から堂々と取り扱ったこと。その姿勢が多くの読者に評価されたのではないでしょうか。