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「対等な女同士」の関係性を描く

「生理回」のみならず、『作りたい女と食べたい女』では、“女”を取り巻く不均衡や抑圧を、要所要所で取りこぼすことなく拾い上げています。

 たとえば春日さんであっても、一人で入った飲食店で「少なくしておきましたよ!」と勝手にご飯の量を減らされ、あるいは見知らぬ男性客から「餃子にライス? 邪道だよそれ~」と上から目線の説教をされる場面がある。理不尽で窮屈な、男のための社会。そこからひととき抜け出し、連帯できる場所として、二人の食卓は描かれているのです。

 
 

 そして、“作りたい女”の野本さんと、“食べたい女”の春日さん。この二人の関係も、ともすれば不均衡なものになりやすい。炊事、とくに女性が行うそれは、無償の家事労働としてその価値を認められないことがままあるからです。

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 ですが、この作品はそうした不均衡を放っておくことはしません。第3話では、春日さんと野本さんの間に発生する「対価」がテーマ。これまでの食費と手間賃を計算して渡そうとする春日さんに、野本さんは「私が好きで作ったものだし…お金出してもらうほどのものなのかっていう…」と抵抗を示すのですが、春日さんはスッパリとそれを拒否します。

 
 

「労力に対して対価を支払うのは価値を明確にする上でも一番てっとり早い手段だと思うんですが」「それにお互いフェアじゃない気がして、私が嫌です」

 どちらか一方が“させてもらう”のでも、“してもらう”のでもない。二人はあくまで“作りたい女”と“食べたい女”であり、その関係性は対等なものなのです。

 

 もちろん、毎話描かれるおいしそうな料理の数々も、読み手の食欲をそそります。また、実際に作って食べてみたくなる料理が多いのもこの作品の魅力。読者参加型のハッシュタグ「#つくってたべたよ」には、作中で登場した「味噌焼きおにぎり」や「ソーセージ味玉丼」といった料理の写真が多数投稿されています。

 これから先、野本さんと春日さんはどんな料理を“つくってたべる”のか? そして食卓をともにする二人の間には、どのような変化が待っているのか?

 待望のコミックス第1巻は、6月に発売が決定。今後の展開から目が離せません!

 【ComicWalker】『作りたい女と食べたい女』
 https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_FS00202041010000_68/

作りたい女と食べたい女 1 (it COMICS)

ゆざき さかおみ

KADOKAWA

2021年6月15日 発売