1ページ目から読む
2/3ページ目

MMTの信奉者からすれば日本はモデルケース

 この理論は、ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授が提唱しているMMT(Modern Monetary Theory)です。日本語に訳すと「現代貨幣論」となります。「現代金融論」と訳される場合もあります。

 伝統的な経済学の理論では、財政赤字が拡大すると、それだけ大量の国債が出回るようになり、高い金利をつけないと売れなくなるので、いずれ国家財政が破綻する危険性が高まると考えられています。

 あるいは、中央銀行が国債を大量に買い上げるので、その分のお金が世の中に出回るようになり、お金の価値が下がる=つまりインフレになると考えられてきました。

ADVERTISEMENT

 こういう伝統的な考え方から見ると、「MMTなど理論とは呼べない」ということになるのでしょう。ところがMMTの信奉者からすれば、「日本は莫大な借金を抱えているが、財政破綻に追い込まれていないではないか。いくら日本銀行が国債を買ってお金をジャブジャブ出してもインフレにならないではないか」ということになるのです。

©iStock.com

 財務省のように財政の健全化が大事という考えからすれば、日本は悪い見本ですが、MMTの信奉者からすれば日本はモデルケースなのです。

アメリカで提唱された「グリーン・ニューディール」

 そもそもこの理論が脚光を浴びたのは、2018年のアメリカの中間選挙で初当選を果たした民主党若手のオカシオコルテス下院議員が主張したのがきっかけでした。

 彼女は、地球温暖化対策を進める「グリーン・ニューディール」を提唱しました。「ニューディール」といえば、1929年にニューヨークの株価暴落をきっかけに起きた恐慌対策として、33年以降、民主党のルーズベルト大統領が打ち出した経済政策のこと。公共投資を通じて景気の回復を図りました。彼女は、温暖化対策に政府の資金をもっと投じるべきだと主張したのです。

 さらに国民皆保険制度を実現すべきだと求めています。オバマ大統領が通称「オバマケア」という保険制度を導入しましたが、皆保険(国民全員対象)にはなっていません。彼女はここでも政府の支出拡大を求めています。