新型コロナの蔓延により先の見えない時代にあって、私たちはどんな情報を信じれば良いのか。3月24日に発売された『今を生き抜くための池上式ファクト46』では、著者の池上彰さんが、この数年で起きた世界中のあらゆる出来事の中から46個の重要な事実=ファクトを厳選し、徹底解説している。この春に社会に出る人や大学に進学する人にとって役立つ情報満載の一冊だ。今回はその中から2項目を抜粋して公開する。

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7年経っても「アンダーコントロール」ではありません

 2013年9月、東京オリンピック誘致の最終プレゼンテーションで、当時の安倍晋三首相が、福島の原発の状況を「アンダーコントロール」と言ったことを覚えていますか。でも、あれから7年経ったのに、まだ「アンダーコントロール」ではありません。東京電力福島第一原子力発電所に行ってみればわかります。いまも大量の汚染水が発生し続け、処理済みの水を溜めるタンクが敷地内に増え続けているからです。

 処理水が入ったタンクの膨大な量は、私も何度か見てきましたが、“壮観”とでも言うしかありません。原子力発電所の敷地内に置いておくために、敷地内の森林を次々に伐採し、空き地を造成しています。

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 タンクの容量は1000トン。高さ10メートルもあり、その数が1000基を超えています。このままでは2022年に敷地は一杯になってしまいます。そうなる前に、処理水をどう“処理”するか決めなければならないのです。

処理水が増え続けている理由

『今を生き抜くための池上式ファクト46』(池上彰 著)

 では、どうして処理水が増え続けているのか。熱で溶けてしまった燃料棒を冷やし続けているのと、豊富な地下水が原発の下を通って汚染されているためです。

 2011年3月の東日本大震災では、原子力発電所が停電し、非常用発電装置も津波で機能しなくなりました。このため原子炉の中で高熱を発している燃料棒を冷却する水が循環しなくなり、沸騰。発生した水素が爆発を起こして、原子炉が破壊され、燃料棒が溶けて原子炉の下に溜まっています。まだ高熱を発しているので、常に水を入れて冷やさなければならず、汚染水が発生してしまうのです。