「反原発という人は、だいたい反自民だよね」
「だって自民党がずっと推進してきたから」
「反原発というと『左翼だ』と言われるらしいけれど、私は左翼じゃない。原発問題は政党やイデオロギーとは関係がないことだ」
アイリーン・美緒子・スミス氏(70)と小泉純一郎元総理(79)の対談が実現し、現在発売中の「文藝春秋」4月号に掲載されている。対談を企画した私は、当日の司会と記事の執筆を担当した。
「自分が誤っていたと、はっきり気づいた」
スミス氏は母が日本人、父がアメリカ人。日本で暮らしながら、40年近く反原発運動に関わってきた。大飯原発の再稼働をめぐる訴訟では原告側共同代表となり、昨年12月4日に勝訴判決を得ている(国は控訴)。若き日には夫で著名な写真家だったユージン・スミス氏とともに、水俣病の現状を世界に発信したことでも知られる女性だ。
一方の小泉元総理は、かつては原発推進派だったものの福島事故を契機に目覚め、現在は「原発ゼロ」を力強く訴えている。
「自分が誤っていたと、はっきり気づいた。日本は即、原発をやめ、再生エネルギーに切り替えなければいけない」
草の根で国や電力会社を相手に戦ってきたスミス氏と、最高権力者であった元総理。経歴も立場も違うふたりだが、意見はほぼ一致していた。
「石炭火力も原発も両方やめないと」(小泉)
「原発は時代遅れですし、再生エネルギーの開発だけでなく、省エネとエネルギー効率アップのシステムを考えることがより重要です」(スミス氏)
地震国の日本でなぜ、まだ原発を動かそうとするのか。やめると決断することが怖いのか。前例を踏襲するほうが楽だからか。
「政治家の感性の問題じゃないかな」(小泉)
「勇気の問題かも」(スミス氏)