なぜ“騙されない仕組み”をつくれないのか
小泉元総理は被災地支援の「トモダチ作戦」に従事したアメリカ兵が放射能を浴び、帰国後、重篤な健康被害に遭っているとし、「日本政府は因果関係はないというが、そうは思えない」と語り、うっすらと涙ぐんだ。スミス氏は、「福島における放射能被害の実態を調査しないことは問題」と指摘した。彼女には、今の福島の状況が水俣に重なって見えるのだ。自身がまとめた「水俣と福島に共通する手口十カ条」を小泉元総理に手渡した。
「一、誰も責任を取らない。縦割り組織を利用する。二、被害者や世論を混乱させ、『賛否両論』に持ち込む。三、被害者同士を対立させる。四、データを取らない。証拠を隠滅させる。五、ひたすら時間稼ぎをする。六、被害を過小評価するような調査をする。七、被害者を疲弊させ、あきらめさせる。八、認定制度を作り、被害者を絞り込む。九、海外に情報を発信しない。十、御用学者を呼び、国際会議を開く」
国が被害を受けた国民を騙そうとする手口である。しかし、騙されるのは果たして国民だけなのか。
小泉元総理は、「原発はクリーンだ、コストが安い、安全だと経産省から言われて頭から信じてしまった。騙されてしまった」と語り、スミス氏は「どうして騙されない仕組みをつくれないのか」と問うた。
重要な政策決定をするにあたって、為政者が正しい判断をするためには、どうしたらいいのか。大事な問いかけであると感じた。
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小泉純一郎氏とアイリーン・美緒子・スミス氏の対談「菅総理よ『原発ゼロ』の決断を」は、「文藝春秋」4月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されています。
菅総理よ「原発ゼロ」の決断を
【文藝春秋 目次】日本の敗戦「フクシマ」と「コロナ」 船橋洋一/東京五輪、国民は望むのか 山口 香 有森裕子/<特集 十年後の東日本大震災>羽生結弦の十年
2021年4月号
2021年3月10日 発売
定価960円(税込)