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「息子に2000万円を運ばせた」

「それは別に現地のエージェントがいるんや。(水谷)会長が香港で雇っている、外国人のエージェントたちです。ODAで使った重機なんかは、それぞれ売る国は違うけど、たいていシンガポールの市場で取引するんやな。税金がかからへんから。それら一連の取引をして、金を香港に持ってきてホテルに集めるエージェントがいるいうこと。わしらはそうして集まった現金を取りに行くだけや。それでも年に何度も通うから、向こうでは顔になっとったな」

 前出のマカオ通いをしてきた水谷建設の取引業者が話す。

©iStock.com

「裏金を運ぶそのためにうちの息子をマカオに連れていったことまであったんだよな、一度。息子が高校を出てしばらくしてからやった。人数が足りへんいうんで仕方なかった。息子にも2000万円持たせて帰ってきた。そしたら、息子に注意されてしもうてな。『おやじ、こんな危ないことやめておきなよ』って俺に諭すんや。やっぱりイヤやったんかな? それでさすがに参ってしもうてね。息子にまでこんなことさせて、いったい俺は何をしとるんや、と情けのうなった。それから誘われても、もう堪忍してくれ、って断るようになりましたんや」

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水谷建設が海外で捻出してきた莫大な裏金

 90年代終わりから05年ごろまで、水谷建設が中古の重機取引で捻出してきた裏金は、数十億円にのぼる。その裏金に目をつけたのが、名古屋国税局である。

〈福島第2原発残土処理でリベート 三重の会社が2億4000万円 東電も把握か〉

 この記事で取り上げたように、地元の読売新聞中部版が、その名古屋国税局の捜査をすっぱ抜いた。03年7月17日の記事だ。そこから水谷建設によるさまざまな裏工作が浮上していく。

 国税当局の調べにより、水谷建設が隠してきた所得は、03 年から04年の2年間だけで38億1000万円に達していたことが判明する。40億円近い隠し所得のうち、20億円以上が裏金化していた。捜査は東京地検特捜部に引き継がれ、水谷は06年7月、11億4千万円の脱税容疑で逮捕される。

 事件はやがて福島県知事汚職に発展した。返す刀で東京地検が福島県知事の佐藤栄佐久を収賄容疑で摘発したのは、繰り返すまでもない。だが実は、そんな大がかりな捜査の裏で、重大事実が埋もれたままとなってきたのである。

【続きを読む】40億円が行方知れず…捜査局に“裏金工作”の全貌を解明させなかった水谷建設の“防御システム”とは