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センチュリーの“名古屋の天皇”

 むろん中京地域の談合のドンは、水谷功とも縁が深い。

「水谷さんと柴田さんの間柄は、有名でしたな。大林がJV(共同事業体)のチャンピオン(メイン業者として工事を受注する仕切り役)になって戸田(建設)とか、西松(建設)なんかが工事に加わり、さらに水谷(建設)がその下請けという立場で重機土木工事で裏金づくりを担う。大林から水谷へ発注するんやから、民間同士の取引や。公共事業やないから水谷側から柴田さんたちへの裏金は賄賂にはならへんし、いくらでも便宜を図れる。そういう仕組みでした」

©iStock.com

 カジノツアー参加者が、こう続ける。

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「大林の柴田といえば、それこそ名古屋の天皇やったでな。東海地方では、それだけ力があった。大林組の名古屋支店長の公用車はクラウンやった。けど、柴田さんは顧問に過ぎないのに、センチュリーでした。運転手が水谷建設の社員。柴田さん専用としてつけたお抱え運転手でした」

カジノ仲間の元国会議員

 博打好きの水谷にはカジノ仲間が大勢いる。その一人として、元国会議員の糸山英太郎の姿もカジノツアーでしばしば見かけたという。水谷自身、1日で5、6000万円もカジノに興じ、負けがこむときには1 億円を超えたといわれるが、糸山はそれどころではなかったらしい。前出の水谷カジノツアーのメンバーが、当時を懐かしむように表情を緩める。

糸山英太郎氏 ©文藝春秋

「糸山英太郎はもっとすごかったで。一晩に2億ぐらい使うんや。5000万の小切手を何枚も持ってきて、そのままチップに替える。糸山の遊びぶりに比べたら水谷さんもかすんでましたな。水谷さんは小切手ではのうて、デポジット(預け入れ金制度)でしたな。ソウル・ウォーカーヒルの名古屋事務所に預金してあって、それを現場で引き出す。いつもソウル入りする前日に数千万円を預けておいたみたいです」

 水谷一行は、韓国の済州島やソウルのウォーカーヒルなどへしばしば出向いた。カジノを運営する側にとっては、1日で1人あたり5000万円、1億円を使う水谷一行は最上級の顧客だ。むろん宿泊する部屋はスィートルーム、航空チケットはファーストクラスである。ホテルや航空チケットまで、カジノサイドが用意するVIP待遇だった。