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マカオ泊の目的

 建設会社の経営者だとはいえ、会社の経費や役員報酬には限界がある。水谷功がそれほど派手にカジノで遊べるのは、本人の自由になる資金があったからにほかならない。遊興費も裏金から捻出されてきたのだが、この記事で取り上げたように、その裏金づくりもまたカジノを使ってきた。裏金工作の舞台はソウルのウォーカーヒルや済州島のギャンブル場ではなく、もっぱらマカオだったという。

「マカオに行く目的は単純だわな。簡単に印鑑(入国証印)を押してもらえるからや。入国したという証明をしてもらうためだけにマカオに行く。向こうにもホテルがリザーブされていて、部屋で寝ててもかまへん。けど、とにかく一晩遊ぶわけです。そうして翌日、マカオから朝いちばんで香港へ向かうんやな」

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 マカオ通いをしてきた水谷建設の下請け業者の一人が打ち明ける。何のためにマカオを経由するのか、などと改めて念を押すまでもないだろう。カモフラージュだ。

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「一世一代の大儲けしたんや」

「誰かてカジノで馬鹿当たりすることはあるやろ。万が一、入国のときに税関に足止めされたときにはこう嘯く。『マカオで一世一代の大儲けしたんや』と。そう言われたら、日本の税関もしゃあないやないか」

 相当に際どい行為ではある。どこから話が漏れるか知れない。水谷はこうした工作をする場合、会社の役員や身内に任せない。一連の裏金工作を担うのは、水谷功が最も信頼を寄せる腹心の取引業者たちである。

 水谷功が会社の人間に裏金づくりを任せない理由は、水谷建設社内で実の兄弟と骨肉の争いをしてきた苦い経験が影響しているのかもしれない。社内の人間はいったん会社を辞めると、競争相手になる。水谷はそれを恐れたという。身内や社内の裏切りはあるが、下請け業者というビジネスパートナーなら仕事を発注してさえいれば、そう簡単には縁を切れないという発想だ。

 裏金づくりには、それぞれの役割分担もある。言ってみれば、マカオツアーのメンバーは、現金を持ち帰る単なる運び屋に過ぎないが、重機取引で捻出したその裏金を香港のホテルに持ち込む役目も大事だ。そこはどうしているのか。