昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「“裏庭の肉屋”始めました」米野智人がメラドにお店を出したワケ

文春野球コラム ペナントレース2021

2021/03/26

 ライオンズが今季開幕を迎える10日前、3月16日に行われたオープン戦の日に僕のお店「BACKYARD BUTCHERS」はメットライフドームの一塁側スタンドにオープンしました。

 不思議な感覚でしたね。2010年途中にトレードでライオンズに移籍してキャッチャーから外野に転向し、ライトを守っていました。ライオンズを退団した6年後、そのライトの後ろに自分が立っているとは、まったく想像しませんでした。

 ライトスタンド上段からグラウンドを見ると、ファンの方と同じ目線になるんだなと。しかも、一緒にプレーしていた選手もまだいますしね。球場にお店を出すのは、お祭りに参加しているような感じでした。

 僕がライオンズを退団したのは2015年。それから6年経っても、皆さんしっかり覚えてくれていたのはうれしかったです。

 特に「見ていました」と言ってもらったのは、2012年にソフトバンクのファルケンボーグから打った逆転満塁ホームラン。もう9年も前のことですが、あの一発を打っておいて良かったなと(笑)。あのホームランで選手寿命が3年伸びましたけど、今回声をかけてもらったことも含めると、それ以上の価値があったと思います。

 

「裏庭の肉屋」の2つの意味

 メットライフドームにお店を出すことになった経緯は、去年の6月、ライオンズの球団職員の方に「米野さんのセカンドキャリアをできる限り応援したい」と声をかけてもらったことです。ちょうどメットライフドームのリニューアルが進んでいる時期で、「自分たちが目指しているボールパークに参加してほしい。一緒に盛り上げていきましょう」と言ってもらいました。

 僕自身も去年、一昨年に何度か見に行って、“自分がいた頃より、すごくいい雰囲気に変わっているな”と感じました。ちょうどメットライフドームが生まれ変わろうとしているタイミングだったのは、自分にとっても大きかったです。今年の1月まで下北沢でやっていたお店のコンセプトにも合うので、その延長でやってみたいと思いました。

妻の貴美(左)さんと一緒に店に立つ筆者 ©中島大輔

 店名の「BACKYARD BUTCHERS」を直訳すれば、「裏庭の肉屋」。“第2のお肉屋さん”という意味と、メインのグラウンドだけではなく、バックヤードのお店側からも球場を盛り上げたいという意味を込めました。

 “第2のお肉屋さん”というのは、動物性の食材を使わず、植物性の食材だけを使用しているからです。「ビーガン」(菜食主義者)が欧米と比べて浸透していない日本で、それに特化したお店を初めて野球場で始められるのは僕にとってすごくうれしいです。

 僕が食への興味を深めたのは、現役時代のことでした。30歳近くになり、疲れが抜けにくくなったことがきっかけです。

 まだまだ現役を続けたいし、そういうことがケガにつながったりするので、それまでほとんど気にしていなかった食事を見直しました。すると日に日に効果を感じ、やっぱり体に入れるものは大事だなと思って、より多くの関心、興味を持つようになりました。

ファンと交流する筆者(左) ©中島大輔

 特に大きかったのは現役引退する前年の2015年、遠征先の福岡で一冊の本に出合ったことです。試合後、ツタヤに一人でフラッと行き、立ち読みしていると『ジョコビッチの生まれ変わる食事』という本が目に止まりました。

 テニスのトッププレイヤーが、どんな食事をしているのか。そう思って立ち読みしたら、グルテンフリーなど聞いたことはあるけど、深く知らないことが書かれていました。すぐに買って宿舎に帰って一気に読み、次の日からやってみました。それが今の仕事につながっています。