文春オンライン

2021/03/28

「死ぬことばかり考えていた」30代の挫折

――30代後半に大きな挫折があったとのことですが、声優のお仕事がほとんどなくなってしまって、もう声優を辞めようとお考えになったそうですね。

山田 女房に「少ない給料でいいから、決まった額が入ってくる仕事にしてほしい」って言われたんです。そんなことを悶々と考えながら、袋貼りとか、おもちゃの組み立てとか、袋詰めとかの内職やそのほか、いろいろなバイトをしましたけど、たいしたお金にならなかったね。

――お子さんもいらっしゃるわけで、生活も大変ですよね……。

山田 そりゃ落ち込むよね。落ち込んだまま、たまに声優の仕事に行く。傍から見たら、冴えない男ですよ。自分でもわかっているけど、どうしようもない。そのまま声の仕事をやる。帰ってきてから、また内職の繰り返し。

 その頃はセリフを言うのも怖かったですね。すごく緊張するんです。

©深野未季/文藝春秋

――『一休さん』の将軍様をはじめ、数々の人気アニメでメインキャラを演じてきた山田さんが、セリフを言うのが怖くなってしまった。

山田 気持ちが負けているんです。失敗したくない、迷惑かけたくない、と思ってしまう。その頃は完全に鬱状態でした。誰とも話をしたくないし、人に会いたくもない。思考がなくなって、一人になったときは、どうやって死のうかってことばかり考えていました。

――立ち直ったきっかけは何だったのでしょう?

山田 ある日、家に帰ると小学生だった子どもたちが無邪気に夕飯を食べていました。僕は何を食べても味がしないから、ほとんど食べなかったし、好きな酒も飲まなかったから、一人で二階に上がったんです。頭が痛くて、叫びだしたいんだけど、声が出ない。

 そのとき、子どもの笑い声だけが聞こえてきた。ダメなときって、何とかしようとして、それが思い通りにいかないから悩むんだけど、そのときは素直に「もうダメだ、俺は」と崩れ落ちた。本当に腰が抜けたの。でも、初めてそのとき「もうこれ以下はないんだ」と思ったんだね。そこから開き直りが生まれたんです。