メスを虜にする“すみだのドンファン”
元祖であるすみだ水族館のペンギン相関図をじっと見ていると、あることに気が付く。特定のペンギンに“ハート”が集中していることがあるのだ。これはもしや、モテモテペンギン? すみだ水族館広報の山口さんは「ペンギンの場合、人間の“恋”というより“繁殖”に紐づく部分が大きいですが……」と前置きしながら、“すみだのドンファン”のモテっぷりを紹介してくれた。
「ペンギンの場合、交尾行動をするとその時点でカップル成立、つまり“夫婦関係”になります。夫婦になると2羽が同じ巣で寝起きをし、日中も行動をともにすることが増えます。
すみだ水族館には何組か夫婦がいますが、《バジル》♂と《ピーチ》♀はそのうちの1組です。《ピーチ》はとても健気な妻で、いつも《バジル》の後ろについて歩いていて、夜も2羽の巣で《バジル》の帰りをご飯も食べずに待っているときもあります。《バジル》がなかなか巣に帰らないときも、それでも怒らずそっと側にいる。ただ《バジル》は“自由人”なんです」
毎晩、巣にも帰らずに《バジル》はどこで何をしているのか。
「《ヨモギ》♀と《まつり》♀にちょっかいを出しています。しかも《ピーチ》が見えないところで体をクネクネさせたり、寄り添ったり、毛づくろいをし合うなど、《まつり》とも《ヨモギ》とイチャイチャして、かなり自由です」(同前)
しかし《バジル》が《ヨモギ》に心惹かれることも無理ないことなのかもしれない。《ヨモギ》も、アピール上手なモテペンギンなのだ。
「《ヨモギ》は特定の相手がまだいない、フリーの女の子です。繁殖の時期に入る少し前くらいから、オスペンギンの周りで頭を膨らませ、体をくねらせてアピールしています。
今までに《バジル》、《わっしょい》♂と羽づくろいをしたり、目の前でクネクネし合うなどしてお近づきの関係になりましたが、交尾をしているところは確認できていないので、正式なカップルにはなれていないようです。いまは同時並行で他にも数羽のオスにアピールをしています」(同前)
本来、ペンギンは繁殖の時期になるとペア同士で仲を深め、相手のいないペンギンは他のペンギンにアプローチをするという。浮気や不倫をしたとしても、いざとなると夫婦の関係を大切にするのだ。