自分が喜んでもらえる側になるんだっていう感覚
——この頃に音楽を始めたんですよね。
高校のイベントでステージに立って歌わせてもらったときからです。それがすごく楽しくて。聴いてくれた人が「良かったよ」って言ってくれることもあって、「何これ?」って、これまで味わったことのない新しい喜びでした。いつも喜ばされる側だったから、自分が喜んでもらえる側になるんだっていう感覚を得て、それにハマってステージに立つようになったんです。
——今はバンド漬けの日々なのでしょうか。
本業は音楽ですがそれだけでは生活できないので、荷揚げ屋をしながら、グループで京セラドームに立つことを目指している途中です。
過去のことは過去のこととして受け止めています
——お母さんとはずっと会っていないんですか?
お母さんとはなんだかんだ、ときどき会っています。このあいだも、僕の支払いが遅れてガスが止まってしまったとき、お風呂入らしてって言ったら「勝手に使えや」と言ってくれて家に行きました。ピンチのときには助けてくれることもあります。お母さんは教育が激しい人で、別に悪い人じゃないんですよ。だから、過去のことは過去のこととして受け止めています。
——大人同士として接するようになって変わったことは?
たまに過去の話をするようになりました。しょーもない話ですけど、僕が小学校1年くらいのとき、カップ焼きそばを作ったことがあったんです。お湯入れて3分経ってお湯切ってっていうのを僕なりに頑張ったんですが、当時のお父さんに「茹ですぎ!」「お湯、もっと切れよ!」って怒られて、めちゃくちゃショックやったことがありました。それを覚えてる?って聞いたら「覚えてるよ。そんなん、言わんでもええのにね」って。昔ほど険悪じゃないので、そんなことも、きっかけさえあれば、ゆるく話せる感じです。
——西成高校でカツコ先生と出会って、色々なことが変わったんですね。
そうですね。僕自身の目標もできました。サッカー選手にはなられへんかったけど、いつかバンドで有名になって児童ホームに歌いに行きたいんです。昔、僕が児童ホームにいるときにバンドが来てくれたことがあって、その時に音楽ってすごいなと初めて思ったんです。でも「しょーもないやつが行ってもなぁ……」と思うから、少しでも有名になってから行きたい。それで親から虐待を受けたり親がいなかったりする子供たちに、少しでも何か夢を持てるものが届けられたらと思っています。
ほっつんさんのグループStar T Ratは4月28日にシングル「暁」も発売した。将来に希望を持てなかった少年は、いま夢への道程を歩んでいるのだ。
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