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グレる? グレるって、どんな感じなんだろう

——相手にストレスを与えたくないとか、相手の気持ちをすごく優先している印象があります。グレてやろうと思ったことはないんですか。

 ©文藝春秋

 うーん……グレる? グレるって、どんな感じなんだろうと思います。そうですね……あまり周りに迷惑かけたくなかったからな。結果、外で暮らして、周りに迷惑ばかりかけているんですけど、極力かけたくないという思いはあるので、そこは気をつけながらやっていましたね。誰かを傷つけたりするのも嫌やったんで。迷惑をかけない範囲を考えながら当時は過ごしていたかもしれないです。

——ベンチで寝ていたというのは、どこなんですか。

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「うえほんまちハイハイタウン」のベンチです(写真)。ハイハイタウンは下がショッピングモールになっていて上に住居がある建物なので、隠れられるスペースがいろいろあったから、こっそり階段を上がった突き当りの室外機のぬくもりで寝ていました。屋根もありましたし。でも警察に見つかってしまって。周りの人はみんな僕の生活環境を知っていたから、中学3年の春くらいから一時期また児童施設に入れられました。でも施設で暮らしている間に親と話す機会があって、とりあえず「ごめんなさい」と言っていったん家に戻ることになりました。施設にいることが本当に嫌だったので。

ハイハイタウンのベンチと、室外機の場所を詳しく地図で書いてくれたほっつんさん。小さな頃のことは「あまり覚えていない」「よくわからない」と話すことも多い一方で、この記憶は非常に鮮明である。 ©文藝春秋

気づいたら、家族が引っ越していた

——家に戻ってから、西成高校へ入学するわけですね。

 そうですね。西成高校に入学したのですが、また少しすると親との仲が良くなくなって、家に帰れなくなりました。それでまた外で暮らすようになって、気づいたら、家族が引っ越して、いなくなっていたんです。それで住む家もなくなって、学校にも行かれへんし、留年してしまって。もう希望も何もなかった。

 でも、当時担任やったカツコ先生に「学校やめる」と話したら、先生は「絶対に高卒はとったほうが良い。今やめたらあかん!」と言ってくれて、生活環境なども全部整えてくれました。それで4年間で無事高校を卒業することができたんです。