2021年1月度の月間ギャラクシー賞も受賞した、『逆転人生』(NHK)の「貧困の連鎖を断て! 西成高校の挑戦」(1月25日放送分)。番組で紹介された大阪府立西成高校はかつて非行や中退の多い「教育困難校」だった。しかし、山田勝治教頭(現校長)が赴任してプロジェクトを立ち上げ、「反貧困学習」に取り組み始め、やがて就職率100%の学校に変貌する。
この番組に西成高校の卒業生として出演していたのが、「Dプロモーション」所属のボーカルグループ「Star T Rat」の「ほっつん」こと堀田賢(すぐる)さん(27)だ。ほっつんさんも小さい頃から育児放棄され、ベンチで寝た経験もあり「つらくなることが多くて、みんなと顔を合わせたくない、将来なんかなかった」が、西成高校で“逆転人生”を果たした。
今回、彼に取材をしたのは教育分野の取材も多く、プライベートでは8年間に渡って小学生に文章の書き方を教えるボランティア「新聞づくり教室」を続けているライターの田幸和歌子氏だ。【前編】でみえてきたのは、番組では描かれなかったほっつんさんの過酷な人生だ。親との折り合いが悪く、中学2年生になると自宅に帰らなくなり「ホームレスみたいな感じやった」の状態に陥ってしまったという——。
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お金がないなりに楽しんではいました
——次第に学校へも行かなくなってしまったんですよね。日中はどう過ごしていたんですか?
昼間はひたすら外で寝て、学校が終わってからみんなが集まってくると起きて、ひたすら友達を探しに行っていました。夜は家にも帰れないから、友達の家とか、大阪城とか、チャリンコで公園とか行ってました。お金がないなりに、体を動かしたり、探検したりして、楽しんではいました。
——ですが中学生になると友達付き合いでお金がかかる場面も増えてきますよね。
そうですね。みんなはお小遣いをもらっているので、カラオケとかにも行きたいじゃないですか。でも僕がいると行きづらいだろうから、そういうときは自分からさりげなく外れたりしていました。あんまり特定の子と一緒にいると、その子のやりたいことが出来なくなってストレス溜めさせちゃうから。そういうときは他の地区の友達と遊んでいました。西成とか東成、寝屋川、住吉、住之江……ぐるぐるいろんなところをまわって友達を探していましたね。僕も、生きるために必死やったんで。