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毎日起こしに来てくれたカツコ先生

——2012年当時、西成高校には非正規雇用者やシングルマザーの家庭が多く、育児放棄や教育放棄されてきた生徒がほとんどだったと番組で紹介されていました。カツコ先生(番組にも登場したほっつんさんの恩師)を始め、先生方が年間600件もの家庭訪問を行い、寄り添ったと。先生方が生活保護の手続きや、住む家の手配などもしてくれたそうですね。

 はい。生活保護で借りられる家のリストがあるんですけど、その中の何個かをめぐった中で、カツコ先生が「ここで。私が起こしやすいから」と学校の一番近くを選んだんです。僕は遠くが良かったけど、先生は「いや、絶対近くがいい」と(笑)。

ほっつんさんが一人暮らししたアパートの近くには、多数の福祉物件があった ©文藝春秋

——それで毎日起こしに来てくれたんですよね。すごい先生ですね。

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 本当にすごいし、優しい先生でした。カツコ先生にも家庭があって、息子さんがちょうど僕と同い年くらいだから、「ついでや」と言ってくれて、おにぎりとか作ってくれて。朝、起きたら、ここらへん(顔から20~30センチほどの距離)に先生の顔があるんですよ(苦笑)。当時は僕も甘えていたので、すごく嫌がっていましたけど。たぶん自分の子どもを起こして弁当作って、僕のおにぎり作って、朝はよ出て、僕を起こしに来てくれていたんですよね。

ほっつんさんが通った西成高校 ©文藝春秋

——ほっつんさんが住んでいた賃貸アパートは西成高校からは歩いて20分ほどの距離がありますよね。それを毎日というのは、すごいですね。カツコ先生は、ずっと担任だったんですか。

 最初の担任だったんですけど、そこから4年間ずっと僕とセットです。クラス替えする度にカツコ先生は「またかよ~~!」って言うんですよ。ずっと俺のお世話役だったから、担任になることなんかわかっているのに(笑)。

高校生のときの親みたいな存在

——これまでの人生で、こんなにも深く関わってくる人はいなかったのでは? 最初は「うっとうしいな」という思いもありましたか。

 常に思っていましたよ、昔は(笑)。先生は最初の半年間くらい毎日来てくれてたんですけどやめてほしくて。僕が「ホントに起きるから。もう来んといて」「もうホントにやめて。絶対起きるから」と言ってそれで行かへんかったら、カツコ先生が「また行くで!」「わかった、行くから!」って言ってまた来るんですよ。

1人暮らししたアパート ©文藝春秋

 僕もほんまにお母さんに言うみたいに「もうええ!」って怒っていました。今思えば、高校生のときの親みたいな存在でしたね。僕はあまり親とか家族と過ごしてこなかったので、母親の存在もよくわかっていなくて、理解しようともしていなかったんですよ。でも、カツコ先生には「おかんってこんな感じなんやろなあ」と思ったりしていました。