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2021/03/27

 番組終盤、スケジュールがギリギリな中での脚本リライトなど数々の困難を乗り越え、旧作から続投している声優陣たちのアフレコを経て作品が完成し、初号試写を迎えるシーンはとても感動的だ。

 監督は開始前に挨拶だけして試写室をあとにしてしまったが、その感謝の言葉には力がこもっていた。上映中、スタッフの中には涙でマスクを濡らす人もいた。長期に渡る制作の苦労が報われたであろう表情にこちらも感動すると同時に、そうだ、この間にコロナというあらたな敵も社会に登場したんだ、とあらためて痛感するシーン。

 こんな過程を経て公開された映画を自分は観たのだ、とあらためて感慨深い思いに駆られる。確かに今回の「シン」は「謎解き」とも「答え合わせ」とも違う、各キャラクターが確実に成長し、その結末と向き合う素晴らしい作品に仕上がっていた。長い時間をかけて完結したからこその同時代性も感じられる。あの異常な構図やアングルへのこだわりを知ってしまうと、あらためてそこだけを確認するためにもう一度劇場に足を運びたくなる。

2016年、上海で開催されたイベントに展示された際のエヴァンゲリオン像 ©時事通信社

「プロフェッショナルとは?」に対する庵野の答え

 この番組では最後に「プロフェッショナルとは?」と問い、その答えを引き出すのが恒例となっている。だがそれを質問された庵野監督は「あまり関係がない」「この番組にその言葉がついてるのが嫌い」と一蹴する。密着の中で「監督とは」「アニメーションとは」という質問にひとつひとつ答えてきた彼からすれば「プロフェッショナル」という曖昧な言葉にはさして意味がない、ということなのかもしれない。「そういうことじゃないんだよ」と。

 しかし、そんな「プロフェッショナル 仕事の流儀」のコンセプトそのものを否定する発言とは裏腹に、 監督から湧いてくるアイデアをひたすら待ち続け、与えられたギリギリの時間の中で常に作品をより良きものにしようと戦うたくさんの現場スタッフの背中が紛れもない「プロフェッショナル」として記録されていたのが印象的だ。当然それらを背負って立つ庵野監督自身の姿もまた然り。

 番組では僕が本稿の書き出しで考えていた「世の中の価値観が変化する中で監督自身にどのような葛藤があったのか」といった疑問については結局よくわからないままだった。しばらく経ったらそれらについて少し興味なさげに語る庵野監督のインタビューなどもまた出てくるのかもしれない。作品としては一応の完結をみせたエヴァだが、付き合いはもう少しだけ続きそうだ。

※ 記事中の写真を一部差し替えました。(2021.3.29 19:45)

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