テレビシリーズは、シンジの内面にフォーカスし、イメージ映像を中心にシンジの心の解放を描いた。そこでは、世界は自分の心が映し出されたもので、だからこそ心が変わることで世界もまた変化するという可能性が示された。シンジは、自分はここにいていいんだ、と自分を肯定し、その姿が周囲のキャラクターから祝福され作品は締めくくられる。
25年前の今日・・・
— エヴァンゲリオン公式 (@evangelion_co) March 27, 2021
1996年3月27日
『新世紀エヴァンゲリオン』
最終話
「世界の中心でアイを叫んだけもの」放送日でした!
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『シン・エヴァ』を見ると、このシーンに相当するような、シンジの認識が大きく転換するシーンがある。
『シン・エヴァ』は、自分が行ったことの重さに押しつぶされたシンジが、言葉を失い動けなくなった状態から始まる。そんなシンジのところに足を運ぶ、アヤナミレイ(仮称)。シンジたちは『:破』のラストで起きたカタストロフ「ニアサードインパクト」から生き延びた人々が集まる第3村に身を寄せているが、ここの人々と暮らすうちにアヤナミレイ(仮称)の内面に、『:破』でシンジが救おうとしたレイと同様に心が生まれてくる。そしてその心から発した言葉が、シンジを救う。
アヤナミレイ(仮称)の言葉を聞いた時、シンジの胸中では、テレビ最終話「世界の中心でアイを叫んだけもの」のラストのように、コペルニクス的展開が起きていたはずである。だからこそシンジは動き始めることができたのではないか。テレビシリーズでは人類補完計画中に起きた変化が、『シン・エヴァ』では現実の中でシンジに訪れるのである。
アスカの「気持ち悪い」行方
では『Air/まごころを、君に』のラストはどうか。この作品では、シンジが様々な悩みを通り抜け、最終的に、「自他の境界が融解した傷つかない世界」よりも「自分が傷つくとしても、他者の生きている世界」を選ぶことで終わった。そして赤い波が打ち寄せる波打ち際で、肉体を取り戻したシンジは、隣に横たわるアスカの首を締める。そこにアスカが「気持ち悪い」と言葉を投げかけ終わる。
【追告 B 公開】
— エヴァンゲリオン公式 (@evangelion_co) March 28, 2021
『#シン・エヴァンゲリオン劇場版』
シリーズすべての音楽を担当する、鷺巣詩郎による楽曲「this is the dream, beyond belief...」に乗せて、劇中の戦闘シーンを中心に描かれた追告90秒を公開しました。#シンエヴァ pic.twitter.com/Bcoboxib5f
『シン・エヴァ』でこの作品ラストと呼応するのが、アスカがシンジに投げかける、『:Q』でシンジが意識を取り戻した時、どうしてアスカはシンジに怒りを向けたのか、という質問だろう。
アスカがゲンドウとの決戦に赴く直前、シンジはアスカが怒った理由について、自分の考えを告げる。この時のシンジの答えは、なぜ『Air/まごころを、君に』でアスカが「気持ち悪い」という言葉を発したのか、ということのアンサーとしても解釈することが可能な言葉でもある。そう読解してみると、『シン・エヴァ』は人類補完計画後を描いた『Air/まごころを、君に』のラストについても、シンジは現実世界の中で自力で決着をつけたという形に、読み取ることもできる。