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大量に見つかる薬物

 捜索は十数カ所に及んだ。それらの場所から、予想していたベンゾジアゼピン系の薬物はもちろん、バルビツール酸系睡眠薬、ブロムワレリル尿素系催眠剤、エーテルのほか、危険性のある抱水クロラールやクロロホルム、GHBなどの脱法ドラッグなどが、箱単位で見つかった。その量は想像を絶するもので、まるで薬問屋のようだった。

 女性たちを眠らせてからさまざまな性行為に及ぶ犯行の状況を克明に記録した、5000本に達するビデオテープも押収された。それ以外にメモや録音など、証拠品は多種多様を極めた。

映像から薬物を特定する

 有働理事官から、「相談したいことがある」と再び呼ばれた。

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「押収したビデオなぁ、被害者が全部映ってるだろう。あれから、使ってる薬物わからないかなぁ」

「えっ。映像からですか」

 これには戸惑った。映像の内容から使用薬物を特定したという話など、聞いたこともない。そもそも、公判に耐えられる証拠になるのか。使用薬物の特定は、その代謝物や胃の内容物を調べて行なうのが普通だが、犯行直後でなければ使用された薬物は代謝されてしまう。証明が不可能なのだ。

 少しでも可能性があればやってみるし、頼られたら引き受けて全力を尽くすのが私の生き方だ。よく考えてみると、そういう観点から映像を見たことがなかったので、何かわかるかもしれないと思った。

「検討してみます」

©iStock.com

 捜査本部から大量のビデオテープが持ち込まれ、一部の解析を始めていたところだった。映像は、意識が薄れていく女性の様子をハンディカメラで収めた場面から始まる。次第に女性のろれつが回らなくなり、意識がなくなると、場面はベッドで横たわる女性を映し出す固定カメラに切り替わる。そこに、仮面やマスクなどを被った男が登場し、執拗な性行為が繰り広げられていった。

 その中で、被害者の女性の皮膚が発赤している場面を発見した。映像を巻き戻して調べると、最初の場面では発赤が認められない。精査すると、照明ライトが倒れて被害者に当たったあと、その部分に発赤が生じていることが見て取れた。