カタギからも人望の厚い異色の親分
龍馬会長補佐は、ヤクザには珍しく酒もタバコもやらず、大の甘党だった。身長は170センチ強で、体重が約80キロ。ジョギングを毎朝欠かさず、読書家で論客。新宿の「ロフトプラスワン」で若者向けの講演を行ったこともあった。
また自身が作る「龍馬カレー」は有名で、ご馳走になった人はかなりの数に上る。
カタギの人たちからも人望が厚く、人脈は広く国際色豊か。ヤクザとしてはかなり異色の親分であった。
「45年前の過去をずっと引きずってきて、そしてまたそれを再現するような内部抗争の現場に居合わせたという強い自責の念と悔い……。最高顧問という立場にある自分が抑えることも出来ないで、そうした騒ぎが起きてしまったことに強い責任を感じていました。なんとか西口茂男総裁にお詫びしたい、責任を取りたいという気持ちが、割腹という行動になったのではないでしょうか」
とは、龍馬親分をよく知る人の弁だが、龍馬会長補佐が壮絶な自決を遂げたのは、破門が解けた翌日だったという。破門が解ける日を待って、最後のケジメをつけたのだとも言える。「ヤクザ武士」と言ってもいい、見事な最期の所作であった。
自決した当時はまだ裁判中の身であったが(傷害は無罪になる見込みだったという)、裁判官が出す判決より何百倍も厳しい「最高刑」を自らに与えたことになる。
身を捨てても仁をなす、サムライ精神
「昔気質の任侠の人。街で見かけたホームレスを自宅に連れてきて、有名な『龍馬カレー』を食べさせ、面倒を見るような親分でした。『ヤクザは仁、義、礼、智、信だ』って言ってね、それを実践していた人です。だから、私は龍馬さんの割腹の動機は、『情』を周りに伝えたかったのだと思ってます」(龍馬会長補佐と交友があった知人)
龍馬親分の死から1年後、親分と交流のあったカタギの人間が中心になって、「偲ぶ会」が催され、ある女性実業家がこんな言葉を贈った。
「……多分龍馬会長が自分の死をもって問いかけたかったことは、命より尊きものがあるということだと思います。戦後、神風の父と言われ、自刃された大西瀧治郎中将、市ヶ谷で切腹された三島由紀夫さん、そして龍馬会長……彼らが死をもってまで伝えたかったことは、私たち日本人が古来より受け継いできた、『身を捨てても仁をなす』というサムライ精神を忘れてはいけないということだと思います……」
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