「見事なまでの頑張りだ。絶えず走り、カットし、いつでもリバウンド争いに挑んでくれる。ルーズボールにも飛び込んでくれるし、シュート力もある。エナジー、カット、ハッスルプレーは素晴らしい」
1月中、ラプターズのニック・ナースHC(ヘッドコーチ)もそう述べていた通り、常に全力プレーの頑張りは見事としか言いようがなかった。
ラプターズのチーム内にケガ人が多かったこともあって、年明け以降はベンチから登場して守備面でインパクトを与える役割として定着する。1月24日のインディアナ・ペイサーズ戦から7試合連続で10分以上のプレータイムをゲット。同29日のサクラメント・キングス戦では12得点、31日のオーランド・マジック戦では11得点と、NBAでは自己初となる2試合連続二桁得点も記録した。
このように上昇を遂げる過程でラプターズファンのお気に入りになり、1月下旬には一時、カナダのツイッターで「Yuta」がトレンド1位になったことすらあった。 日本では八村塁の陰に隠れた存在と目されているのかもしれないが、今季前半戦の上昇過程は実にスリリングであり、短期間でラプターズの“ファン・フェイバリット(ファンの人気者)”に就任したといっても大袈裟ではなかった。
記者たちの総意だった本契約への昇格
時を同じくして、1月20日、ラプターズは力を発揮できていなかったアレックス・レンとの契約を解除する。ここでロスター枠に空きができたことで、人気と評価が急上昇中だった渡邊の本契約への昇格を予想する声は少なくなかった。
「ラプターズは2ウェイ契約選手の渡邊を50試合で選手登録できることになっており、まだあと29戦(この当時)も残っているのだから焦って判断する必要はない。ただ、私は渡邊がどこかで本契約に昇格するんじゃないかと思っている」
2月5日、現在最も勢いのある米スポーツサイトThe Athleticのブレイク・マーフィー記者が記事内で記していたそんな記述は、ラプターズを取材する記者たちの総意と言っても過言ではなかった。過去2年はメンフィス・グリズリーズの2ウェイ契約選手として過ごした渡邊にとって、“悲願”といえるNBA での本契約はこの頃には時間の問題にも思えたのだった。