一転、“近年最高”のダンクの被害者に…
ところが――。好事魔多しというが、冒頭で述べた通り、充実のシーズンは2月中旬以降、波乱のシーズンに姿を変え始めている。日米両方のメディアから話題を呼んだ2月10日のウィザーズ戦前、渡邊が左足首の捻挫で離脱を経験したことは返す返すも残念だった。八村との直接対決が実現しなかったというだけでなく、上り調子の勢いが一時的にでも止まったという意味でも厳しいタイミング。そろそろ相手チームのスカウティングが進んだこともあって、復帰後は徐々に見せ場が少なくなっていった。
2月19日のウルブズ戦では、少々不本意な形で渡邊の名前がリーグ中に知れ渡ることになってしまう。この試合の第3クォーターも残り10秒、昨年度のドラフト全体1位指名ルーキー、アンソニー・エドワーズがブロックを狙った渡邊の頭上から豪快なダンクに成功。渡邊は一部から“近年最高”とまで称された“ポスタライズダンク”の被害者となり、その映像は広く拡散されることになった。
今季の渡邊はハッスルプレーで多くのハイライトを演出し、出場試合数、平均得点、リバウンド、ブロック、スティールなどで軒並み自己最高の数字をマークしてきた。それにもかかわらず、このプレーばかりが騒がれてしまったことを口惜しく感じたファンは少なくなかっただろう。
また、3月上旬、NBAが今季の2ウェイ契約の規定を50戦の制限なし、プレーオフ出場可能というふうに修正したことも渡邊には良いニュースとは言い切れなかった。今季は「新型コロナウイルス感染の陽性反応が出た選手」だけでなく、周囲の人物が感染した場合などでも濃厚接触者であれば安全衛生プロトコルによって試合に出場できないため、すでに多くの試合が延期となっている。この影響が2ウェイ契約にも及んでいるのだ。
この変更によってポストシーズン出場が現実的になったのは良いが、チーム側には支配下の2ウェイ契約選手に本契約を与える理由がなくなってしまった。NBAでの本契約獲得、という渡邊が掲げる大目標の成就が遠のいたことは事実だったのだろう。