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振り返れば常に逆境を乗り越え続けてきた渡邊雄太という選手

2011年、ウィンターカップでシュートを狙う渡邊雄太。当時尽誠学園高等学校の2年生、17歳だった ©️AFLO

 渡邊が自覚している通り、来季以降の契約は2020~21シーズン後半戦のプレーに委ねられてくるに違いない。プレーオフを目指して明日なき戦いを続けるチーム内で、再びプレータイムを増やすだけの働きができるか。ここで再びチームからの信頼を勝ち取り、来季以降のオプションにつなげられるか。

 パスカル・シアカム、OG・アヌノビーといったポジションのかぶるラプターズの主力選手が復帰してきただけに、再浮上は容易ではない。特に3月のラプターズはなんと14戦中13敗というどん底の不振を経験し、時を同じくして渡邊はオフェンス面でやや不振に陥ったため、プレータイムが限られてしまう結果になったのだった。

 それでも、地道に準備を整え続けている限り、チャンスはまた必ずやってくるはずだ。先日もラプターズの主力だったノーマン・パウエルがトレードされ、長年チームを支えてきたカイル・ラウリーは今年は残留したものの移籍のうわさが流れ続けており、現在も右足つま先の負傷で離脱中。パウエルの代わりに加入したゲイリー・トレント・ジュニアがすぐにスタメン入りするなど、チームは常に新しく生まれ変わり続けている。そんな状況下で、誰とでも一緒にプレーできる聡明さを持つ渡邊が再び重宝されることは考えられる。

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逆境を乗り越え、再び飛躍することが出来るのか。プレイオフを狙うチームと同様、渡邊も「ふんばりどき」を迎えている ©️getty

 振り返れば、渡邊はもともと大学時代からNBA入りが有望視された選手ではなかったにもかかわらず、努力と適応能力をいかしてここまでたどり着いた。ジョージ・ワシントン大時代は1年ごとに7.4→8.4→12.2→16.3と少しずつ平均得点を伸ばし、4年生時には地元カンファレンスの最優秀守備選手賞を受賞するまでになった。プロ入り時にはドラフト指名からは漏れたものの、慌てず、腐らず、Gリーグで経験を積むことで着実に実力を伸ばしてきた。

 今季のトレーニングキャンプの時点では今の数倍も厳しい位置にいながら、急浮上してファンを感心させたのだった。だとすれば、再びの“ミラクルラン”は不可能ではないのだろう。

 逆境を再び跳ね除け、渡邊が本契約という目標に辿り着く日を多くのファンが心待ちにしている。いつかその日が訪れれば、日本だけでなく、アメリカ、カナダの一部のファンからも渡邊の背中に熱い喝采が浴びせられるはずである。