「ビジュアルが平凡」なのがコンプレックス
――役柄によって眼鏡などの小道具も使い分けていますよね。
田口 僕自身はすごく、ビジュアル的には普通で平凡だと思っているんです。それがコンプレックスでもある。そういう白紙のキャンバスみたいな人間に対して、演出家が好きな色を付けてくれる。それによって映像に映った時に、自分でも知らない自分が映し出されるっていうことが、興味深いです。僕、キャラを作らないと、本当に気づかれないタイプなんです(笑)。だから小道具とか衣装は、演出家とのコラボレーションです。
――田口さんが役に違和感を覚える時はあるんですか?
田口 いい男の役でモテモテの役とか、「それ、僕じゃないでしょ」って思ったりはします(笑)。でも、そういう違和感はあっても、監督がそこでしっかりした理由を持ったうえで「あなたをチョイスしました」っていうなら「これは新しいチャレンジだな」って飛び込みます。この仕事をやっている醍醐味って、そういうところかなとも思っています。
脚本を壊さずに「自分の色」を出す必要がある
――主役を演じることと、脇役を演じることの違いはどこにあるんでしょう?
田口 それも脚本があったうえでの主役であり、脇役であるので、それぞれがどう描かれているかが大事だと思います。ただ、主役という立場は単純に出番が多いですから、余計なことをしなくても成り立つ。むしろ、主役の人がうるさいと疲れちゃうでしょ。
逆に脇に回った時は、オルタナティブなソウルを発揮できるんです。出番も少ないですから、その中で脚本を壊さないように「自分の色」を出していく必要がある。そんな違いはありますね。
――今回の映画では、いわゆる「脇役」と呼ばれる役者さんが集まっていますが、皆さん、どのように役を演じていましたか?
田口 光石(研)さんが「あれだけの個性的な役者が集まったのに、みんながそれぞれの邪魔をしない」という事をおっしゃっていて。「あ、本当にそうだな」と思いました。きちっと自分のことを主張するけれど、キャッチボールする相手の邪魔はしない。非常に大人の礼節を保っている。だからこそ、みんなこの場にいるんだなと。そういうある種の心地よさは感じました。