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「撮り鉄vs鉄道会社 仁義なき戦い」を見て思う鉄道ファンの“心の叫び”

2021/04/06

八高線の車掌は撮り鉄に向け中指を立て…

 過去を振り返ってみれば、迷惑な撮り鉄にしびれを切らし、ありえない行為に及んだ鉄道マンもいる。2021年1月、JRの車掌が乗務中、駅ホームで撮影をしていた撮り鉄に向かって、中指を立てたのだ。

 その様子は、SNSで瞬く間に拡散。画像を見ると、たしかに八高線の乗務員室から中指を立てている。なんということか。中指を立てる行為は、世界的に見ても許されない侮辱のポーズだ。一般的な鉄道ファンはみな「ヒエッ」と悲鳴をあげた。

 これについてJR東日本は事実関係を認め、謝罪。どうやら該当車掌は、自分が写真に写り込むと思い、カッとなって行為に及んだようだ。ここまで彼の激情を駆り立てるほど、日々のストレスが積み重なっていたのだろうか…。

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 中指を立てる行為そのものは許されないが、この事件では「気持ちは理解できる」「自分が写り込んでいたら嫌だ」など、擁護する声もたくさん見られた。「自分も撮り鉄なので、注意して撮りたい」とツイートする鉄道ファンもいた。

 以来、八高線というワードを検索すると、候補ワードとして「中指」が出るようになったのは悲しい。ただ、この件を受けてなのか、最近は撮り鉄のカメラに対し、手を振ったり、ピースサインを送るフレンドリーな鉄道マンもいるようだから、おもしろい。

撮り鉄同士が叫び合う迷惑イベント「罵声大会」とは?

 駅など人気の撮影ポイントでは、撮り鉄同士の小競り合いが起きることもある。いい写真を収めたいがための場所取り合戦はその最たるものだ。その様子から、誰が名づけたか「罵声大会」と呼ばれるようになり、YouTubeやTwitterなどではその様子がアップされている。

 大会という名がついているが、もちろん1等賞を決めて賞品が授与されるイベント、というわけではない。残念ながら、撮り鉄に起因する迷惑行為の1つである。罵声大会は、撮り鉄たちが競うように罵声を浴びせている現場を揶揄した言葉なのだ。

(※写真はイメージ)©️iStock.com

 罵声大会の動画を見れば、駅ホームで、カメラを持った男たちの怒号が飛び交っている。罵声の内容をよく聞いていると「下がれ!」「下げろ!」と言っている。彼らは一体何に怒っているのか。

 珍しい列車が駅に入ってくる場合、プラットホームには人だかりができ、横に列ができることがある。その際、すべての人がきれいに写真を撮れるように気を回すのがマナーだ。しかし、ときどき前列の人の頭や機材が、後列の人の写真に入ってしまうときがある。これに対して「下がれ!」「下げろ!」ときつい声をかけているのだ。状況が変わらないと「ふざけてるのか」「日本語わかるのか!?」などとエスカレート。一触即発の雰囲気だ。

 もちろん罵声大会が開催されている時間は、駅も通常営業中である。一般客も利用している。罵声大会に出くわしてしまった人は、非常に怖い思いをするだろう。なかには、駅員や一般の人に向けて罵声を浴びせるケースもあるから悲しい。

 同じ鉄道ファンとして、列車に興奮する気持ちはわかる。しかし、愛ゆえに罵声を浴びせる光景はまことに残念である。