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「撮り鉄vs鉄道会社 仁義なき戦い」を見て思う鉄道ファンの“心の叫び”

2021/04/06

 鉄道ファンにはさまざまなジャンルがあるのをご存じだろうか。

 私のように鉄道旅行など乗ること自体を楽しむ「乗り鉄」、鉄道の走行音や駅メロを愛でる「音鉄」、駅弁が好きな「駅弁鉄」など、ジャンルは多岐に渡る。

 そんな中、ここ最近、お茶の間をざわつかせているのが「撮り鉄」と呼ばれる鉄道ファンたちだ。鉄道の写真を撮るのが趣味の人たちで、スマホでカジュアルに撮影する人から、プロ顔負けの機材を駆使して撮影をする人もいる。レアな列車が運行される日は、「またとない機会だ!」と鬼気迫る勢いでファインダーを覗くさまを見かける。

 いいアングルのためなら、たとえ火の中、水の中。ローカル線に乗っていると、足場の悪い山中で三脚を立て、撮影にいそしむ撮り鉄を車窓に見つけ「こんなところまで!」と驚いてしまう。

 愛の深さゆえか、ときに度を越えたマナー違反をやらかす輩もいる。線路や私有地への立ち入りや、なかには邪魔な樹木の枝を折ったり、花畑を荒したり、鉄道車両に細工を施すなどの迷惑行為をする過激派だ。このような人たちは、我々鉄道ファンの中でも、近づきがたい存在であったりする。

 もちろん世間からは「いい写真が撮れれば何をしてもいいのか」と批判の声も上がっている。なにより、安全に運行することが義務である鉄道会社は、彼らの対応に頭を抱えている。そして、しばしばSNSでは、撮り鉄vs鉄道会社の仁義なき戦いの様子を垣間見ることができる。

撮り鉄がキレた「でんしゃがだいすきなおともだちへ」

 2021年3月、Twitter上である画像が話題となった。

 大阪府高槻市内の踏切に掲出された、ある貼り紙である。線路の中に入らない、電車の邪魔をしてはいけない、私有地に入ってはいけないという内容であるが、通常のそれとは少し様子が違っていた。

 すべて、ひらがなで書かれていたのである。

(※写真はイメージ)©️iStock.com

「でんしゃがだいすきなおともだちへ」――このような言葉から始まっていた。一見、子どもたちに向けられたメッセージに見えるが、これに撮り鉄が噛みついた。

「明らかに大人の撮り鉄に向けた内容」「俺たちを侮辱しているのか!」と、すべてひらがなで書かれたことを挑発と受け取り、怒り心頭である。この話題はSNSで一気に拡散され、その日のトレンド上位にまで上り詰めた。

 後日、JR西日本は「鉄道ファンをけなすものでない」と説明している(すでに貼り紙は撤去)。しかし、撮り鉄たちの怒りの炎は鎮火せず、「じぇいあーるにしにほんではたらいている人たちへ」と、煽るようにツイートした人もいた。JRへの反撃ということなのだろう。

 この争いは、多くの鉄道ファンがあきれ返る結果となった。撮り鉄vs鉄道会社の根深い戦争を感じずにはいられないエピソードだった。