橋本環奈がかかえているハンデ
『ハルチカ』では部員の集まらないブラスバンド部の入部勧誘に、橋本環奈演じるヒロインがビラを配るが生徒たちが誰も受け取ってくれない、というシーンがある。しかしこう言っちゃなんだが、配ってるヒロインは橋本環奈なのである。どう考えても集まるだろう男子部員。同級生どころか、隣の学校の男子まで押しかけるレベルの美少女である。
『午前0時、キスしに来てよ』では、平凡な少女という設定の橋本環奈が、女優である恋のライバルに対して「やはりお美しいですね、この世のものとは思えないくらい、お顔も小さくてまるでお人形さんみたいで、それに比べて私は…」とコンプレックスを告白するセリフがある。橋本環奈にそんなことを言われる相手女優の身にもなってほしい。フランス人形みたいな顔はお前の方じゃ、と心の中でつっこまざるをえない設定の破綻であった。
つまり橋本環奈は、アイドルとしてはそれこそ1000年に1人級の逸材だが、女優としては「美しすぎて」逆に役を選ぶ難しさを背負っているのだ。
もちろん多かれ少なかれドラマや映画では平凡な少女を美人女優が演じるものだが、ものには限度というものがある。
たとえば、ハンサムな男性俳優の身長が180cmであれば「スタイルがいいね」と称賛され、人気も出るだろう。190cmになったら「すごいね」と驚かれるかもしれない。だがもし俳優の身長が2メートルを超えてしまったら、その俳優がたとえハンサムでも、普通のドラマで主人公を演じることが難しくなるだろう。視聴者が自分を重ねることができず、周囲から浮き上がってしまうからだ。
身長2メートル超の俳優は、おそらく漫画やアニメの実写化作品で巨漢を演じることが多くなるはずだ。公称身長152cm(これは12歳の女子児童の平均身長とほぼ同じである)の橋本環奈がかかえている「美しすぎ、小さすぎ」という女優としてのハンデは、それに似ているかもしれない。
その人気と知名度からすると意外かもしれないが、橋本環奈は若手女優の定番である「東京キー局の連ドラのラブストーリーで主演」というコースをたどっていない。身長2メートルの俳優がアクション映画に主演して、180cmの相手と殴り合いをしても観客に「負けるかも、頑張れ」と思ってもらえないように、橋本環奈は恋のハラハラドキドキを演じるにはあまりに「強すぎる」女優で、その顔面力は男子の身長2メートルに相当する諸刃の剣だ。