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「なんの仕事ならできるの?」“女子アナブーム”入社、2年目で結婚、出産…TBS堀井美香さんが明かす「異色のキャリア」と「救われた言葉」

TBSアナウンサー堀井美香さんインタビュー ♯1

2021/04/11

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 働き方, 読書, テレビ・ラジオ, 芸能, ライフスタイル

note

 ナレーションの名手として知られるTBSアナウンサーの堀井美香さん。局アナとして「ナレーション」を極める人は多くない。初の著書『音読教室 現役アナウンサーが教える教科書を読んで言葉を楽しむテクニック』(カンゼン)を出版したばかりの堀井さんに、今年で入社27年目を迎えるベテランアナがたどってきた異色のキャリアと、「読み」の魅力について聞いた。(全2回の1回目/後編へ続く)

堀井美香さん

◆ ◆ ◆

「第一声」が素晴らしいのは、ジャパネットたかた元社長の髙田明さん

『音読教室』では、朗読の材料としてはじめに『ごんぎつね』が取り上げられている。……のだが、タイトルである『ごんぎつね』の「ご」に、なんと5ページが費やされていた。「最初の一文字はなかんずく大事」と力説する堀井さん。「なかんずく」とは、「とりわけ」という意味である。

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「本当は5ページでも足りないくらいです。私自身、いろんな先生に朗読を教わってきましたが、多くの先生に『俯瞰で読んでみて』とか『もうひとつ感情を入れて』というようなことを言われました。俳優さんならその説明だけですぐに表現できるかもしれませんが、アナウンサーとしての読みの指導を受けてきて、いつも理論的な説明を求めてしまっていました。その言葉をどう立てればいいのか、出だしはどうしてその高さになるのか、なぜそこに抑揚がつくのかが知りたかった。教えていただくと読みは確かにどんどん変わっていきました。ただ、自分がどうやって文章を音に変換していったのか。知らず知らずのうちに体感していたロジックを一度まとめたいと考えたのです。

 ちなみに、第一声が素晴らしい方として私が感銘を受けたのは、ジャパネットたかたの元社長、髙田明さんです。高田さんのセールストークは声の出し方が計算され尽くしているんですよ」

  雰囲気で押し切ってしまう部分も多かった「読み」の技法。そのコツを法則化し、誰にでも上達可能なスキルとして本にまとめるまでに至った堀井さんだが、かつては「ただ文章をきれいに読めばいいと思っていた」と語る。

著書『音読教室』には、“朗読ガチ勢”といわれる堀井さんが法則化したコツがつまっている

 「入社直後から自分でもバラエティのナレーションは割と上手くできているとわかっていました。そんな時、『ザ・ベストテン』の山田修爾プロデューサーが『君はナレーションがいいからもっと勉強しなさい』と、ドキュメンタリーの現場に入れてくれたんです。

 内容は、イスラム教徒を取り上げた難解なもの。少し読みに自信のあった自分でしたが、そこではプロのナレーターの方の実力を思い知らされました。将来的に報道やドキュメンタリーといった硬派なものも読めないとキャリアは3年で詰む。そう突きつけられた瞬間でした」