「41対0(ソウル市25区・釜山市16区) 怒った民心、政権を審判」(朝鮮日報)、「与党惨敗、恐ろしいほどに背を向けた民心」(ハンギョレ新聞)「怒った民心、与党を捨てた」(ソウル新聞)

 翌朝の新聞の一面には保守系から進歩・革新系、中道系にいたるまでこんな見出しが躍った。

次期大統領選挙を占う「プチ大統領選」で野党が圧勝

 4月7日に行われたソウル・釜山市長補欠選挙で、ソウル市は57.5%VS39.1%、釜山では62.6%VS34.4%で、両市ともすべての区で野党「国民の力」が圧勝した。与党は1年前の総選挙で180議席を獲得した姿は見る影もなく、大惨敗となった。

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文大統領 ©AFLO

 来年3月の次期大統領選挙を占う「プチ大統領選」とも呼ばれたこの選挙での大敗により、責任論が持ち上がった与党指導部は翌8日に総辞職することを発表し、与党内の迷走が始まった。3月半ばから支持率を37%、34%、32%(世論調査、韓国ギャラップ)と落とし続けていた文在寅大統領は急速に求心力を失うことになり、本格的なレームダック化が現実となった。

「賃貸借3法」施行前に自らは賃料を大幅引き上げ

 与党「共に民主党」の選挙用の青いジャンパーから「党名」が消えたのは選挙戦終盤。金尚祚青瓦台政策室長の不動産スキャンダルが明るみに出た直後だった。

 金室長は昨年、自らが主導していた「賃貸借3法」(家を借りる庶民の権利を強化する趣旨の法律)が施行される2日前に自身が保有していたマンションの賃貸料を大幅に引き上げていたことが発覚。「賃貸借3法」では賃貸料の引き上げの上限を5%に定めていたが、金室長は14%も引き上げていた。

 さらに、やはり立法を主導していた与党議員も施行前に賃貸料を上げていたことも分かり、不動産政策への不満が積もりに積もっていた世論の怒りは爆発した。

 与党は選挙戦終盤からようやく謝罪行脚に乗り出したが、時すでに遅し。

 これほど大敗した原因は何だったのか。中道紙記者はこれまでに積もった政権への不満が限界を超えたと解説する。