韓国では、4月7日にソウル市長や釜山(プサン)市長選挙を始めとした地方の補欠選挙を控え、選挙ムードが高まっている。

 特にソウル市長の座は、次期大統領のポジションに直結すると考えられているだけに、「ミニ大統領選挙」という言葉が登場するほど、ソウル市民だけでなく全国民からの関心が高い。

 周知のとおり、ソウル市長選は、朴元淳(パク・ウォンスン)市長が2020年7月、元女性秘書Aさんに対する強制わいせつ疑惑に包まれたまま、疑惑の死を遂げたことから行われる。朴氏は、Aさんが強制わいせつ容疑で朴氏を警察に告訴した翌日の7月9日午前にソウル市長公邸を出た後、10日未明にソウル郊外の山中で、遺体で発見。遺書などが残されていたことから、警察は自殺と推定した。

ADVERTISEMENT

 2011年10月からソウル市長を務めていた朴氏は、弁護士として韓国で初めて「セクハラは犯罪」との判決を引き出したことで知られている。そんな人権派弁護士が強制わいせつ疑惑に巻き込まれて自殺したという事態に、国民は驚愕したのだ。

強制わいせつ疑惑を抱えたまま自殺した朴元淳・前ソウル市長 ©AFLO

報じられ始めた「人権委報告書の詳細」

 いま朴氏の行った行為の詳細が連日報道され、ソウル市長選挙の主要争点として再び浮上している。韓国・国家人権委員会(人権委)による、朴氏の強制わいせつ疑惑についての調査結果の詳細が明らかになったためだ。

 朴氏の死後、世論はその疑惑について事実が明らかになることを望んだが、警察当局は朴氏の死を理由に「公訴権なし」として捜査を終了してしまっていた。

 その代わりにソウル市が官民の合同調査団を編成して事件を調査すると発表したが、それは被害者のAさん側が断った。Aさん側によると、Aさんはソウル市秘書室など職員約20人に対して、4年にわたって朴氏のセクハラ問題を訴えつづけてきたが、そのたびに「(君が)かわいいからだ」「楽な公務員生活を続けたいなら我慢しろ」などと黙認するように求められていたという。つまりAさんとしては、ソウル市に調査されたのでは“共犯者”に調べられているようなものだと思ったのだろう。

 そこでAさん側が調査を要請したのが、韓国の国内人権機関である人権委だった。