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 このテレグラムのメッセージはAさんの言葉のように削除されて証拠が残っていなかったため、供述内容が事実であることを明らかにするだけの証拠が足りなかった。

 しかし、人権委の決定文は、被害者が2020年5月に精神科治療を受ける過程で作成した「相談記録紙」の内容にも同じ供述が出てくるという点を根拠に、この部分も事実と認めたのだ。

与党は「女性」を前面に押し出したが…

 朴氏のセクハラ問題が再燃し、苦境に立たされているのは、言うまでもなく与党「共に民主党」のソウル市長候補である朴映宣(パク・ヨンソン)氏だ。

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与党「共に民主党」がソウル市長選に擁立した朴映宣氏 ©AFLO

 与党は、セクハラ事件が発端の選挙だけに、女性有権者にアピールできる女性候補である朴映宣氏を公認していた。

 さらに朴映宣陣営は、女性運動出身の南仁順(ナム・インスン)議員のほか、元女性家族部長官の陳善美(チン・ソンミ)議員を選挙対策委員長に、元大統領府報道官の高旼廷(コ・ミンジョン)議員を報道官職に起用し、女性を前面に押し出した。

 ところが、この3人の女性議員は、朴氏からのわいせつ被害を告訴したAさんを「被害者」ではなく「被害を訴える女性」という名称で呼ぶよう「共に民主党」の党内世論を主導した人物とされ、朴氏のわいせつ行為を認めようとしなかったことで知られていた。

 その後、メディアから「2次加害だ」という非難を受けて、Aさんの呼び方を「被害者」と改めていたが、それでも彼女たちはAさんに謝罪をしなかった。そのため人権委の決定文の内容が詳細に報道された直後から、Aさんが「女性議員3人組を陣営から外してほしい」と主張。3人組は「被害を訴える女性」という表現について謝罪に追い込まれ、朴陣営から離れた。

「赤坂・朴」「土着倭寇」と呼ばれる与党候補

 ただ“3人組”の辞退後も、朴候補は厳しい立場のままだ。文在寅政権と対立して辞任した尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長の一件、公社職員による土地不正取得事件などがあって、国民の間では、「今回の地方選挙で文在寅政権に鉄槌を下したい」という空気が蔓延しているためだ。

 与党としては、昨年4月の総選挙で大変な効果を得た「反日戦略」を使えなくなった点も痛手だ。