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 これまで、選挙の時期になると、野党である保守派=親日という主張が、与党候補たちと支持者たちから出回っていた。「選挙の局面において日韓関係の悪化は『共に民主党』に有利」との報告書が同党のシンクタンクから出るほど、反日戦略は与党にとって「伝家の宝刀」と見なされてきた。

 しかし、今回のソウル市長選では、保守派野党「国民の力」の呉世勲(オ・セフン)候補側が、与党・朴映宣候補が保有している東京・赤坂のマンションを理由に「親日派」と攻撃している。

保守系野党「国民の力」がソウル市長選に擁立した呉世勲氏 ©AFLO

「国民の力」は3月27日に記者会見を開き、「戦犯企業の豪華マンションを10年以上保有しながら、強制徴用支援法を発議した厚かましい朴映宣候補は国民に謝罪せよ」と主張した。

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 同党によると、朴候補は夫の名義で2009年に東京・赤坂の一等地に建つマンションを分譲で購入していた。当時分譲したのは、日本の旧財閥系不動産会社など2社だった。

 同党側は「この2社は代表的な戦犯企業であり、朴候補は戦犯企業を通じて10年間も賃貸所得をあげたにもかかわらず、清算されなかった親日行為が続いているなどと図々しい発言をした」と主張した。

 野党の攻撃に対し、朴候補は自分に向けられた「真の土着倭寇(親日的な韓国人を叩く用語で、韓国に土着した倭寇の子孫という意味)」「赤坂・朴」などの野党側の揶揄を選挙法違反の疑いで告訴・告発。野党・呉候補に対してはソウル市内谷洞の土地投機疑惑を連日のように指摘している。

 終盤に入ったソウル市長選は、このように泥沼化の様相を呈している。

文在寅政権の「反日戦略」がブーメランに

 筆者としては、東京にマンションがあるだけで、朴候補を「土着倭寇」呼ばわりする野党側の選挙戦略が、意外と韓国国民から共感を得ていることが、とても不思議である。

 ただ、日本製品に対する不買運動を煽り、日本製品を購入する自国民を「親日派」「土着倭寇」と罵倒する情緒を作った文在寅政権の戦略が、ブーメランとなって戻ってきたようにもみえる。

 2000ウォンの日本製ビール、2万~3万ウォンのユニクロの洋服を買わずに我慢した韓国国民から見れば、与党候補の10億ウォンのマンションは、許せない「ダブル・スタンダード」なのだ。