長く厳しい米ツアーを戦い抜くために必要なもの
男子ゴルフの歴史を振り返ると、1980~1990年代に活躍した青木功(180センチ)、尾崎将司(181センチ)、中嶋常幸(180センチ)の3選手は、体格面でも世界のトッププロにも見劣りしていなかった。だが、当時はパワーよりも技術が重んじられた時代。日本人の若手では、丸山(169センチ)、伊沢利光(169センチ)、片山晋呉(171センチ)、田中秀道(166センチ)らが台頭し、2000年代には世界4大メジャーでも好結果を残すようになった。一方で、大型選手の多い欧米勢はウッズに影響され、筋力トレーニングを重ねて、さらなるパワーアップをはかった。結果、丸山をはじめとする日本人選手は「エンジンの差」を感じ始めるようになった。
もちろん、ゴルフは今でも「体格」だけで決まるわけではない。しかし、長く厳しい米ツアーを戦い抜くには、並外れた体力が必要だ。体力がなければ、集中力の維持が難しくなり、練習の継続もできなくなる。だからこそ、世界では「排気量の大きいエンジン」を持つ選手が優位。若くしてそれを感じた松山は、プロ転向後、2014年に主戦場を米ツアーに移してからも、飯田光輝専属トレーナーのもと、より激しくトレーニングを重ねるようになった。
松山くんが“悔しさ”を感じた一言
「下半身を中心にほぼ毎日、トレーニングをしていました。メニューがきつくて、時には吐いてしまうこともありましたが、強くなりたい一心で続けていました。日本でプレーしていた頃、ある人から『日本のプロ野球選手と米ツアー選手の筋力は同等だけど、日本のゴルファーはそこからはるかに下』と言われた悔しさもあったようです」(進藤氏)
そうした積み重ねで、強靭な下半身を築いた松山は、2014年のメモリアル・トーナメントで米ツアー初優勝を飾り、2016年2勝、2017年2勝と、文字通り、世界トップクラスの選手へと進化を遂げた。
「飛距離も伸びていきましたが、『マンぶりしなくても300ヤード』の域に達したのは、2016年ですね。今の体が出来上がってきたのもその頃です」(進藤氏)