毎年この時期になると、規模や業種に関係なくさまざまな会社から同じように聞こえてくるのが、「今年の新入社員は」とか「今どきの若い社員は」といった言葉。新入社員が入社したのはいいが、さてどう扱っていいのかわからないという上司の声だ。
すでにこうぼやいてしまった段階で、“新入社員”は自分とは別の生き物、理解しにくく扱いづらいと思っている方も多いだろう。だが上司のモノの見方や言動が、新入社員を扱い難くしているのかもしれない。
嫌われてなくても「慕われてない」「人望がない」上司
嫌われる上司といえば、すぐ感情的になる、攻撃的で威圧的、いつも自分が正しいと思っている、人によって態度が変わる、仕事を押し付ける、仕事ができない、言うことがコロコロ変わる、責任逃れするなどの特徴がよく挙げられる。そこまでひどくないが部下に慕われない、人望がないという上司もいる。彼らに共通するのは、相手の立場に立って物事を考えない、捉えない傾向があることだ。だが、「最近の新人は……」とぼやいているだけに、“自分では”部下のことを心配し考えているつもりの人が多い。
経営心理コンサルタントとして数多く見聞きしてきた事例から、「反面教師」をもとに解説していきたい。
コロナ禍の今年は、新入社員の入社までのプロセスがこれまでと違う場合も多い。企業ではリモートワークが進み、面接もオンライン。入社するまで会社に行ったこともなく、社内の人間に直接会ったことがないという新入社員すらいる。オンライン面接だと上司や面接官は良いところしか見せないし、社内の雰囲気や空気感を肌で感じることもできない。自分なりに「こんな会社かな、社会人になって頑張ろう」と希望と期待を膨らませてみるが、入ってみると想像と違う、上司がこんな人だったとは……という事態が起こりかねない。理想と現実のギャップを感じやすい状況にあり、これまでの新入社員より上司や周囲の言動に敏感に反応するかもしれない。例えばこんなケースがある。
丁寧な説明をせずに“やらされ感”を与えてしまう
1.「ここではこうしているから」
こう言って上司が説明をしない。例えば電話応対。入社してすぐは電話に出るのが新入社員の仕事という職場も多いだろう。コールは3回鳴るまでに取れ、先輩より先に出ろ、“もしもし”は使うなと言われるが、詳しい理由の説明はなく「そういうものだから」「それが新人の仕事」で終わり。丁寧なビジネス研修がある会社なら別だが、特段そういった機会がない企業も少なくない。スマホ世代の若者は固定電話での応対が苦手な場合もあるため、“やらされ感”が強くなる。自分の価値観や経験をそのまま新入社員に当てはめてしまっても、通用しないこともある。最初だからこそ細かなことも省略せず、丁寧に親切に説明することも必要だ。