ハスラーのヒットによる影響
アウトドア系SUVの「趣味車」としての性質を、コンセプトとして的確に演出したのがハスラーである。アクティブかつポップなデザインは、消費者の「遊び心」に訴求し、結果として「アウトドア志向ではないが、車で個性を表現したい」というユーザーを取り込むことにも成功した。
「アウトドア路線の小型SUVが、アウトドアを趣味としていない層にもヒットする」という奇妙な事実は、次のような動向を引き起こす。すなわち、外観的にはアウトドアに向いているように見えるが、4WD性能が優れているわけでもない「SUV風」車種の増加であり、言い換えるなら「アウトドア風味のタウンユースSUV」の台頭である。
アウトドア向けにプラットフォームを専用設計するのでなくとも、車高を上げ、下回りを樹脂パーツで覆うことにより「アクティブ感」を演出する、という手法が多用されることになった。ユーザーとしても、とりたてて4WD性能が必要なわけではないから、「アクティブ感」があれば十分なのだ。
SUVヒエラルキーが完成した後は
つまるところ、SUVの魅力はその汎用性であると同時に、それに付随する「アクティブなイメージ」あるいは「プレミアムなイメージ」そのものでもある。むしろ、SUVの多くが前輪駆動モデルであることを考えれば、汎用性よりも「イメージ」の方が重要な役割を果たしていると言えるかもしれない。
普通に使えながら、普通の車とは少し違う。そのイメージによって、SUVはヒエラルキーの外側に位置づけられる。「上司の車より格下の車種を」「子どもの送迎でバカにされない車種を」といったつまらない心労に、煩わされることも少なくなるだろう。
しかし、各メーカーがこれだけSUVのラインナップを充実させてしまうと、今度はSUVの車種間において新たなヒエラルキーが形成されることになる。すでにトヨタおよびレクサスには、100万円台後半から800万円超えまで、 異なる価格帯で8つの都市型SUVがラインナップされており、もはやヒエラルキーは明白になりつつある。
SUVの商品価値が、「スタンダード」から外れた存在である点にあるのだとしたら。SUVを選ぶことがもはや「遊び心」の表現ではなくなり、SUV車種のヒエラルキーが固定化した時、SUVは魅力的な商品であり続けるのだろうか。
そもそも「環境性能」が問題となる時代に、プレミアム感やアクティブ感といった「イメージ」のために車体を肥大させたSUVはそぐわないようにも思えるが、これは野暮というものだろうか。