大地 はい、彼女が14、5歳のときに知り合って。私の『マイ・フェア・レディ』が好きだと言って、ひとりでキャリーバッグを引きながら東京以外の公演にも来てくれていました。私は「イライザ」を20年演じて、2010年に卒業したんですけど、その時に「いつか、沙也がやれたらいいね」なんて話してて。そしたら彼女、3年前に実現できたんですよ。
阿川 え、すごい! じゃあ、その時はアドバイスとかされたんですか?
大地 いえ、「沙也のイライザ像を作ればいいんじゃない?」って言いました。歌詞やセリフもちょっとずつ違ったんですが、彼女は私のをずっと観ていたから、それが出てきそうになった、とかで大変そうでした(笑)。
阿川 でも、そうやって人知れず、後輩に手を差し伸べるようなことをたくさんやってらっしゃいますよね。黒木瞳さんも、宝塚時代にすごく学年の離れたパートナーで……。
大地 学年は8つ離れていますねえ。
阿川 男役のトップと娘役のトップがそんなに離れていることって普通ないんでしょ? 黒木さんがいじめられることを懸念されて、守っていらっしゃったとか。
大地 相手役と決まった以上は、ね。最終的に決めるのは劇団なんですけど、彼女がいいんじゃないかと推薦したのは自分なので。
阿川 黒木さんの何に惹かれたんですか?
大地 並んだときの相性、バランスもありますが、光るものがあったというか……。ちょっとみんなと違ったところがあったんです。私服を取ってみても、宝塚の娘役はフリフリした服を着ている子が多い。そんな中、彼女は一人だけOLみたいなタイトスカートを穿いていたんです。私もそういうところがあったので、いいなと思いましたね。
阿川 通じるものがあった。
大地 私はオーソドックスな宝塚っぽさからはちょっとはみ出しているほうだったんです。だから、そこでまず目を引きましたね。
「そんなところへ行ったら…」芸能界入りに大反対した父
阿川 なるほどねえ。そもそも大地さんは淡路島で、300年続く旧家のご出身とお伺いしましたが、本業は何でいらっしゃるの?
大地 うちは元々は庄屋です。まだ苗字もない時から続く家で、昔の地図があってそれを見ると、ほとんどうちの田んぼになっている、みたいな。本家は島の真ん中辺りで、周りはずーっと山と田んぼ。私が生まれ育ったのは洲本市で、「淡路島の東京」とか言われている場所なんですけど(笑)。
阿川 年の離れた末っ子なんでしょう?
大地 そうです。姉が2人の3姉妹で、11歳と9歳離れています。
阿川 それは溺愛されるよねえ。「芸能界に入りたい」とか言い出しちゃって、大騒ぎじゃなかったですか?