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大地 当時、宝塚を辞めて本格的にタレント活動しないか、と言ってくださったプロダクションの方もいたんです。でも、何があろうと自分が納得するまでは辞めない、ってその時すごく思いました。そこからもっと宝塚愛が生まれて、新しい男役像を目指しだしたんです。

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舞台で被ったハゲ頭のカツラ

阿川 具体的には、どういう改革をなさったんですか?

大地 メイクもそうですし、ヘアスタイル、発声法とか……。演技についても、「三歩歩いて、止まって、ここを見て、このセリフ」みたいに細かく演出されることが多かったんですが、私はそれをその通りやらなかった(笑)。ちょっと意見を言ったり、質問したりしていました。普通そんなことはあり得なくて、言われたままやる。生意気だったんですよね。

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阿川 ある舞台でハゲ頭のカツラを被ったというのは?

大地 『風と共に去りぬ』ですね。スカーレットが機関車に乗ってアトランタの駅に入ってくる。そこでレット・バトラーと出会うんですが、その機関車に乗っているだけの機関士役なんです。『風と共に~』はロングランだったので、毎日公演しているうちに、いろんな機関士がいるんじゃないかなあ、と思って工夫していたんです。例えば今日が初めての新人機関士かもしれない。今日、子供が生まれた人かも。その中にはツルッとしている人もいるだろう、と思って、帽子の下に手作りのカツラを被って出たんです。

阿川 すっごい想像力ですね。

大地 セリフも何もない、照明も当たらないような役ですよ。大劇場の奥の端っこで、乗客役の人達が行き交っている後ろで、私が帽子を取ったらドッと大爆笑が来ちゃったんです。

阿川 それは狙ってたの?(笑)

大地 狙ってないんです。役作りだと思って大真面目にやっていましたよ。でもそこで、レット・バトラー役の榛名由梨さんがパッと後ろを振り返って、ぷっ! と吹いちゃった。ああ、怒られるって思いました。しかも私、一幕が終わったあと生意気にもエレベーターに乗ってたんです。

阿川 乗っちゃいけないの?

大地 本当は階段で下りないといけないんです。そしたら榛名さんと組長さんたちが乗っていらして、榛名さんは「ちょっとやめてよ~!」って大爆笑してくださったんですけど、組長さんが「そうやって甘やかすからあかんねん!」って。これはまずいと思って、終演後真っ先に帰ろうと、またエレベーターに乗ろうとしたら、また組長さんがいらしたんですよ! さすがに乗れませんでした。

体調に恵まれなかった日々

阿川 アハハハハ、コメディか?『大地真央物語』(笑)。でも、これまで2回、扁桃腺と声帯炎と、つらい経験をされたそうで。

大地 扁桃腺は15歳で予科に入ってすぐの時ですね。それまで淡路島の自然の中でのびのび育っていたのに、寮に入った途端規則、学校にも勿論規則。ストレスになったんでしょうか、腎臓炎の疑いで、二学期の間ほとんどおやすみしていました。扁桃腺から菌が入って腎臓炎になるケースがある、と言われて、迷ったんですけど取っちゃったんです。

阿川 昔は扁桃腺を子供のうちに取っていましたからね。