1ページ目から読む
2/4ページ目

「クリーンな政権」を強調した文在寅政権

 文在寅政権は朴槿恵前政権を群衆による“ロウソク・デモ”で追い詰め、退陣に追いやって誕生した。「市民による革命政権」を自称していた。保守政権2代の前・元大統領の朴槿恵と李明博を職権乱用や金銭疑惑などで投獄し、旧政権下の高官もほとんど獄に追いやった。

 そして新政権スタートに際しては「公正・平等・正義」を公約。弱者保護、庶民の味方を看板に「クリーンな政権」を強調した。韓国ではもっぱら「進歩派」「進歩勢力」「進歩陣営」などと「進歩」の文字が使われているが、左翼・革新勢力を基盤に国民への親近感と「新鮮な政権」のイメージを振りまいてきた。

 政権発足直後、文大統領以下、政権の要人たちが上着を脱いだワイシャツ姿で、紙コップ(?)のコーヒーを片手に大統領官邸の中庭を散策するシーンがメディアに大々的に公開された。「開かれた権力」「国民に寄り添う政権」をPRする演出だった。世論に「プルトン(不通)」と批判された朴槿恵政権の閉鎖性との差別化作戦だった。

ADVERTISEMENT

 文政権は後に「プロダクション政権」と皮肉られるが、そうした演出(イメージ作戦)で民心掌握に精を出した。KBSやMBCなどテレビを中心にメディア・コントロールに長けていたのもそのせいである。

政権の偽善が一気に表面化

 その民心が今回、政権離れを見せたきっかけは何といっても「曺国事態」である。政権3年目の一昨年、政権のスター的存在だった進歩派のエリート教授、曺国(チョー・グック)の法相任命をめぐる政権の偽善、つまりネロナムブルぶりが一気に表面化したのだ。

 朴槿恵政権打倒の“ロウソク・デモ”を誘発したのは、象徴的にいえば朴槿恵の私的な“陰の側近”だった崔順実の娘の梨花女子大不正入学疑惑だった。権力をバックにした不正入学に民心が激高し、それが結果的に政権崩壊につながった。ところが文大統領の側近、曺国も娘を医者にするため似たような不正をやっていたというのだ。

 曺国は政権の公約である「公正」や「正義」の主唱者でありその看板だった。これでは典型的な偽善である。問題はその曺国を文政権は擁護し、大規模なロウソク・デモを動員して「曺国守れ!」のキャンペーンまで展開したことだ。公正、正義などどこ吹く風のネロナムブルだった。