女性人権擁護の先頭に立ってきた人物がセクハラ
この文政権の偽善に民心は怒り、一時は数十万の反政府デモが起きたが、曺国の辞任やこの年、対韓輸出管理強化問題などをめぐる反日感情扇動で文政権は危機を乗り越えた。昨年の総選挙は、コロナ事態下での国難キャンペーンと「韓国はよくやっている」という得意の政権PRで民心をつなぎ留めた。
ところがその後、釜山市長とソウル市長が相次いでセクハラ疑惑で辞職、自殺するという想定外の事態となった。いずれも与党系で、特にソウル市長は文大統領の後継者候補の一人であり、女性人権擁護の先頭に立ってきた人物だった。それがセクハラとは!
民心をさらに怒らせたのは、与党(政権)が加害者の市長を擁護し被害を訴えた女性秘書を非難する態度に出たことだ。そして選挙に際し与党は、この種の不祥事があった場合、公認候補は出さないとの党規約を無視し、公認候補を出してしまった。この規約は文大統領が党代表時代に作ったものだった。
重なる偽善、ネロナムブルに加え、総選挙での圧勝にふんぞりかえった与党(政権)のゴーマンぶりに、民心はあきれた。
そのうえ、昨年から今年にかけて権力疑惑を追及する検事総長に対する、政権あげての追放圧力が民心を刺激し続けた。文大統領自ら任命しながら、都合が悪くなると「検察改革」と称してクビにしようというのだ。偽善以外の何物でもない。
市長選惨敗の背景として、暮らしに直結する住宅政策の失敗が挙げられているが、これも政策への不満というより権力層の不正、偽善が大きい。政策的には不動産投機や家賃、多住宅保有の規制を大々的に叫びながら、政権内のスタッフたちは裏では規制逃れで甘い汁を吸っていたからだ。選挙直前には、政府の宅地開発予定地を投機的に事前に買い占めていたスキャンダルが発覚している。