韓国の内政が流動化しはじめた。1年後の次期大統領選の前哨戦といわれたソウル・釜山市長の選挙(4月7日)での与党惨敗は、文在寅政権のレームダック化を意味する。政権を支えてきた左翼・革新勢力にとっての衝撃は大きい。彼らはこれまで「20年執権!」を呼号してきたが、このままだと次期政権も危うい。

 ちょうど1年前の国会議員選挙(総選挙)では与党(文政権)が圧勝したのに、1年後に政治状況が逆転してしまった。与党圧勝から一転して野党圧勝へ——この1年の間、民心にいったい何があったのか?

文在寅大統領 ©AFLO

 韓国政治には「10年周期」説がある。大統領直選制が復活した1980年代末以降、歴代政権は2期10年ごとに保革(あるいは左右)が交代するという、見事(?)な政権交代ぶりを示してきた。左派・革新系の文在寅政権の前の10年は右派・保守系の李明博・朴槿恵政権で、それ以前の10年は左派・革新系の金大中・盧武鉉政権、さらにその前の10年は右派・保守系の金泳三・盧泰愚政権だった。

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 この流れからすると次期政権も左翼・革新系というのが順当なのだが、ここにきてその“周期”が崩れる可能性が出てきた。左翼・革新勢力にとっては「20年執権」どころか5年で終わりかもしれない。

与党惨敗の敗因は「ネロナムブル」

 今回の選挙に際し野党は一貫して「文政権への審判!」を訴えた。かたちは市長選だったけれども実態は国政選挙だった。そして野党の圧勝は、民心が文政権(与党)に「ノー」を突きつけたということを意味する。民心は文政権(与党)の何に不満で何に怒ったのか。この不満、怒りは来年の大統領選まで維持され、保守勢力による政権奪還にまでつながるのか。あるいは1年後にまた一転することはないのか?

 今回の与党惨敗を伝える米国のニューヨーク・タイムズがその敗因として「naeronambul」という言葉を挙げていたと、韓国で話題になっている。韓国通には周知の韓国語「ネロナムブル」の英語表記だが、これは「自分(ネ)がやればロマンスで他人(ナム)がやると不倫(ブルユン)」を略したもの。

「積弊清算!」といって、他者には限りなく厳しいが自らには限りなく甘いダブルスタンダードの価値観、つまり偽善や唯我独尊、独善、ゴーマンを皮肉る政治的な“俗語”で、近年、韓国政治によく登場する。文政権に対する民心の離反の最大原因はこれだったというのだ。韓国世論は「ネロナムブルは文政権のおかげでついに国際語になった!」と自嘲している。