新型コロナウイルスの流行による全国一斉休校などがあった昨年、子どもの自殺者が過去最多を記録した。いじめ、学業不振、進路の悩みなど原因はさまざまだが、「学校に行く」ことが子どもを苦しめているケースが多いという。
ならば、学校に行かない「不登校」は子どもを救う手段のひとつではないのか。日本で唯一の不登校専門紙『不登校新聞』の編集長で、不登校児の著名人へのインタビューなどをまとめた『続 学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)の編集にも携わった石井志昂(しこう)さんに、不登校の現状や課題について聞いた。(全3回の2回目。1回目、3回目を読む)
「何で学校に行かないの」と問い詰めるのは最悪のパターン
──不登校になると、その後のやり直しは難しいのでしょうか。不登校児のセーフティーネットはどこまで進んでいるのですか。
石井 文科省の調査では、不登校をした子の85%が高校進学するというデータがあります。就職率も20歳の段階でみると不登校の子とそうでない子とでそんなに変わらないんですよね。つまり、小中学校で不登校になったから人生負け組というのは、まったくのデタラメです。
私もそうでしたが、不登校の子って、とにかくよく寝るんですよ。受けてきた傷の量が多いほど、休息の期間は長く必要になるのですが、これを知らずに無理矢理活動させてしまうと、傷を悪化させて不登校が長期化するという話はよく聞きます。
──それでも、わが子が不登校になったら、なんとかして学校に行かせようとしてしまう親は多いと思います。
石井 「何で学校に行かないの」と問い詰めるのは最悪のパターンです。それと並んで最近よく聞く失敗例に、子どもの意志に反してむりやり転校させるというものがあります。転校させれば事態が解決するというのは大きな間違いです。本人に休息が必要であるにもかかわらず、「転校したんだから行きなさい」と子どもをさらに追い詰めてしまい、取り返しのつかないケースに発展しかねません。
あとは「何で我慢できないんだ」と叱ったり、本人を否定したりするような言動をとるのもいけません。
また、学校に行っていないことを理由にハンディキャップやノルマを課して子どもを頑張らせようとするのも逆効果です。エネルギーが切れて休息が必要な子どもには課せられたノルマが達成できず、自己否定感が強まって苦しくなるだけです。
──実際にご自分の不登校時代はどうでしたか。
石井 私は中学入学当初から学校に馴染めなかったのですが、ずっとそれをうまく言えずにいました。でも中学2年生のある日、急に感情が爆発して、母の前で「学校に行きたくない」と号泣してしまったんです。それを母親はただ「わかった」と受け止め、学校に「2週間休みます」と連絡してくれました。2週間休むとちょうど冬休み前だったので、1か月くらい休めたんですよ。何も理由を聞かずにただ受け止め、休む期間を確保してくれたのは本当にありがたかったですね。