不登校に悩む子どもだちが、自分が憧れている人に会い、インタビュアーとなって「これから自分がどうしたらいいか」など、自分が聞きたいことを聞く…。そんな趣旨のもと行った、多くの著名人への取材の成果をまとめたのが『続 学校に行きたくない君へ』(ポプラ社)だ。同書より、Creepy Nutsのラッパー、R-指定さんへのインタビューを紹介する。(全3回の3回目。1回目2回目を読む)

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ラップと出会い、自分を肯定してくれていると感じた

── どんな子ども時代を送ってきましたか。

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R-指定   一言で言えば「イケてない子ども」でした(笑)。ラップをしている人は「不良っぽい」と思われるかもしれませんが、俺はまったく不良ではなかったです。とはいえ優等生だったわけでもない。勉強はできないし、運動神経も悪いし、コミュニケーション能力も低くて、学校という世界のなかではかなり下の方の人間でした。

R-指定さん

 みんなが当たり前のようにできていることが自分にはできなかった。そのことに無力感を感じて「自分にはなんもないな」と思っていました。そんなときにふとラップを聞いたんです。それまでは俺自身も「ラップなんて自分とは無縁の世界や」と思っていました。ところがよく聞いてみると「この曲のメッセージって、不良だけに向けたものじゃないな」とわかってきたんです。俺にも「お前、そのままでいいぞ」と言ってくれているように感じました。だから、「不良じゃない俺でも、もしかしたらラップはできるかも」と思ったんです。

 でも学校ではラップの話はできませんでした。なにしろ俺が中学生だった2005年ごろって、売れているラップといえば恋愛ソングとか「親に感謝」みたいな歌ばかりで(笑)。

  かっこいいと思うラップは、売上チャートにはほとんどないような状況でした。こんな状況で「俺ラップ好きやねん」と言っても、鼻で笑われるなと思った。だから家でひっそり歌詞を書いたり、ごく少数の友だちとだけで共有しあっていました。

コンプレックスがあるからこそ、表現するのに適している

 転機になったのは高校2年のときに大阪・梅田のサイファー(路上でラッパーが集まりセッションをする集会)に行ったことです。そこで感じたのは「いろんな人がいるんだな」ということ。それまでは、頭のいいやつは大学に行く、やんちゃなやつは高校を卒業して働く、そんな典型的な2つの道しか頭になかったんです。