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Creepy NutsのR-指定が不登校児に語った“1年間の無職の時期”「ラップに情熱があるのに、ないふりをしていた」

Creepy NutsのR-指定が不登校児に語った“1年間の無職の時期”「ラップに情熱があるのに、ないふりをしていた」

『続 学校に行きたくない君へ』より

2021/04/22
note

 そして、バトルに出ることがうれしかったですね。勝っても負けても気持ちよかったです。なぜかというと、それまで自分は「勝負の場に立つ」という経験がなかったんです。たとえば、学校ではバスケ部に入っていたんですが、ベンチ外だったので、チームが勝っても負けてもどこか他人事でした。自分が勝ち負けの重要な部分を担うことがなかったんです。

 でもバトルのときは、1対1だし、いいラップをすればお客さんが盛り上がってくれる。「俺、今、人生で初めて、主役や」と思ったんです。だから始める前はすごく怖いんですが、一度始まったら気持ちいいんですよ。

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 俺にはバトルをするうえで、自分なりの決まりがあります。それは相手が誰であろうと、ビビったり、ていねいな言葉でしゃべったりすることはしない、ということです。そんなことしたらむしろ失礼なんじゃないかと思うんです。もし自分が後輩にステージのうえで「尊敬してました」なんて言われたら、いやですからね。逆にガンガン言って来てくれた方が楽しいと思います。だから、先輩が相手でも、「むちゃくちゃ言ったろ」と思って今でもやっています。バトルが終わったあとは、足がガクガク震えるときもありますけどね(笑)。

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自分の作る音楽が心に響いてくれたらいい

──ラップで一番大切にしていることはなんですか。

R-指定   自分が楽しめているかどうかですね。自分が気持ちいいかどうか。それがなかったら人にも伝わらないです。今の言い回し気持ちいいな、上手くいったなと本気で思ってないと、相手には伝わらない。ジジイになってもラップしたいし、自分が楽しいと思い続けたいし、「あいついつまでたっても楽しそうやな」と思って貰えたら本望ですね。

── 今、不登校・ひきこもりをしている人に思うことはありますか。

R-指定   俺は不登校やひきこもりの経験はないのですが、そうなる気持ちはわかる気がします。ラップをやっている仲間のなかにも、学校に行かなかったり、うつ病を患っていたりする人もいます。

 そもそもヒップホップのルーツから言うと、1970年代の黒人の人たちが、自分たちが差別されていた状況から、社会に対してなにか見返す、一矢報いるということから始まった文化だと言われています。日本人である自分も、社会やまわりの人間に対して劣等感があったから、それを逆に表現できるんじゃないか、というのがラップする一番の動機としてあるんです。