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談合決別宣言間際の小沢一郎と二階俊博の“不正献金”問題 「関西談合のドン」が語る“和歌山事件”の現場とは

『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』より #23

2021/04/27

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

note

838万円分のパーティ券

 09年に浮上した政治資金問題で小沢とともに東京地検の捜査対象となってきた二階俊博には、西松建設のダミー政治団体に838万円分のパーティ券を購入してもらっていた事実が判明する。

 小沢にしろ、二階にしろ、09年の政治資金規正法違反事件は、かつて摘発された特捜事件の延長線上にある。いわば06年の2つの事件があったからこそ、民主党の小沢一郎や自民党の二階俊博の政治とカネの問題につながったという見方もできる。小沢にとってはそれが福島県知事事件であり、二階については和歌山県知事汚職が、政治資金規正法違反捜査の引き金になっている。二人の実力政治家に対する献金の多くは、05年末にゼネコンが談合決別宣言をする間際、駆け込み的に発生していた。

金丸、玉置の談合地盤を引き継いだ

「二階について、何か聞いていないですか。たとえば関空(関西国際空港)などで、面白い話とか、ないかなぁ」

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 2006年9月、東急建設の常勤顧問だった石田充治は、大阪地検の特捜検事から執拗な尋問を受けていた。特捜部が手掛けた和歌山県知事談合事件の取調べの最中の出来事である。「二階」が元国土交通大臣、二階俊博なのは改めて注釈するまでもない。

二階俊博氏 ©文藝春秋

 二階は1939(昭和14)年2月、和歌山県御坊市に生まれた。和歌山県議だった父親のあとを継ぎ、75年に県会議員選挙に当選する。県議出身だけに、地元和歌山の政治にはことのほか精通していた。二階は中選挙区制時代の83年、旧和歌山2区で自民党田中派から国政に打って出た。支援者が語る。

「二階先生が国政に出た和歌山の選挙区は、玉置(和郎)さんの地盤だったのです。玉置さんの存命中は、最も関西の談合が盛んなころで、玉置さんは談合にドップリつかって利権を押さえていました。金丸信といっしょに『宗教政治研究会』(宗政研)という団体をつくりましてね。金を集める隠れ蓑みたいなダミーの勉強会ですけど、そこを使って金丸さんとつるんでいたのです。そういう金丸さんとの縁があって、玉置さんの亡くなったあと、元田中派の二階さんが玉置さんの地盤を引き継ぎ、小沢さんの下に入ったのだと思います」

 二階は自民党時代の田中派や竹下派、党を割って出た新生党でも、小沢一郎と歩みをともにしてきた。二階が運輸族のボスといわれるまでに力をつけた裏には、小沢や金丸の後押しがあったからにほかならない。もとはといえば、小沢一郎の懐刀の一人である。