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現ナマで受注工作

 関空や神戸新空港の建設など、航空行政に絶大な影響力を行使してきた半面、二階は田中角栄に連なる親中派代議士としても知られる。地元の建設業者をはじめとした支援者を引き連れ、年に数回は中国を訪問している。

「二階の面白い話、ないかな」

 と東急建設顧問の石田に対し、和歌山県の建設談合捜査にあたっていた大阪地検特捜部が、この自民党運輸族議員に注目するのは無理もなかった。東急建設の石田はまさしく和歌山談合事件の当事者であり、和歌山事情にも詳しい。

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 石田が和歌山県発注の公共工事の受注工作に奔走したのは、04年11月からだ。狙いは田辺市のIT総合センター建設で、次が県内の国道トンネル工事だった。石田は工事を請け負うため、県側に実弾攻勢を仕掛ける。石田本人が、事件当時を思い返して言った。

「もとはといえば、このときの一連の和歌山県発注の工事は、スーパー(ゼネコン)大林組の仕切りによって、受注先が決まっていました。それも談合といえば談合ですが、うち(東急建設)も最初は大林から今回はあきらめてくれ、と言われていました。しかし、あきらめきれない。そこで、大林の調整をひっくり返そうとして、現ナマという強引な手を使ったのです」

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 談合はその仕切り役によって秩序が守られているうちは、たいてい発覚しない。だが、個々の会社の経営状態や景気動向に応じ、是が非でも工事を受注しなければならないときもある。そのときは、談合の仕切り役を納得させるための手段が必要になる。そこで最も有効な手段となるのが、「天の声」である。簡単にいえば、発注する側に「天の声」を出してもらえば、調整役も納得せざるを得ないため、工事を受注できるわけだ。実弾攻勢は、そのためのわかりやすい手段なのである。

 東急建設の石田は、関西ゼネコン談合の世界におけるボスの一人ではあるが、本分は建築部門であり、土木分野は専門外だった。しかし、東急の土木部門の談合担当者だけでは心もとないため、白羽の矢が立ったという次第である。二階問題に入る前に、「関西談合のドン」の一人が、みずからが関与した和歌山事件の談合現場を振り返った。