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6500万円の実弾

「和歌山のトンネル工事を取るため、最初は土木の担当者が大林組に足を運んでいました。それで、東急はダメだと言われ、何とかならないかと土木の担当者から私に相談がきたわけです。ただ、建築なら、私でもなんとか話をまとめられるのですが、土木となると、そうそう口出しできない。大林の顧問が仕切っていてどうしようもなかった」

 とは石田本人の回想だ。

「幸いにも、私には知事へのパイプもありました。そこでやむなく知事側に働きかけることにしたのです。知事に食い込んでいたゴルフ場の経営者、井山義一氏に頼めばなんとかなる、と踏んでいました。トンネル工事の前年(03年)にも、私は井山氏に県が発注したITセンターの新築工事を頼んだ。このときには、彼に3500万円を渡していました。それと同じことをすればいい。そうして、問題のトンネル工事で、さらに彼のところへ3000万円を持って行ったのです」

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 ITセンターの工作費と併せて6500万円。これが県側への実弾だ。

政官界と業界をつなぐ黒幕

 ここに登場する井山とは、表向き大阪・堺市にある「天野山カントリークラブ」という名門ゴルフ場の経営者である。天野山カントリーは1962(昭和37)年、智辯学園など学校運営でも有名な辯天宗の堺教区長だった井山の父親が発起人となり、辯天宗徒だった松下幸之助らの肝いりで設立された。27ホールの広大な敷地のそばには、辯天宗の末寺が点在する。大阪の中心地から自動車で1時間足らずの好立地に位置し、高級ゴルフ場として人気を呼んできた。日本プロゴルフ選手権などもおこなわれてきた名門コースである。井山は、若い時分のパチンコ屋勤めなどを経て、父親の後を継ぎ、このゴルフ場経営に乗り出した。

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 身長180センチほどの威丈夫で押し出しも強い。もっとも本人は単なるゴルフ場経営者ではない。建設業界では、知る人ぞ知るフィクサーとされてきた。建設談合の世界には、しばしば政官界と業界をつなぐ黒幕的な存在がいる。それが井山義一である。