「M-1グランプリ2020」で優勝し、一躍人気となったマヂカルラブリーの野田クリスタル(34)。その彼が、ピン芸人時代から出演して独特の芸風を育んだインディーズライブ、通称“地下ライブ”がいま注目を集めている。

 2021年元日に開催され、吉本の配信ライブ史上最高の1万7千枚を超える売り上げを記録した「マヂカルラブリーno寄席」において、ランジャタイ、永野、THE GEESE、脳みそ夫と“地下ライブ”を彷彿とさせるメンバーの中で、ひと際異彩を放っていたのが「モダンタイムス」だ。

“地下芸人”時代の野田クリスタル(モダンタイムス提供)

 野田が高校時代から師匠とあがめる“地下芸人”界のレジェンド「モダンタイムス」のとしみつ(42)と川崎誠(42)に、地下から巣立って売れていく芸人の条件を聞いた。(全3回の3回目/#1#2を読む)

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ラーメンズがさらに地下芸人を狂わせた

――『エンタの神様』(2003~2010年、日本テレビ系)がブームだった時代も、お二人は尖っていた?

としみつ 尖ってましたね(笑)。そんな時期に、ラーメンズさんが一気に注目を浴びたんです。自分たちのやりたいことをやって、かつ格好いい芸人さんとして。その後、同じようなスタイルでやってたバナナマンさんとコラボして、そこにおぎやはぎさんも入って、3組によるお笑いユニット「君の席」みたいなものをつくるもんだから、余計に芸人たちがそこを目指すようになった。

モダンタイムスの、としみつ(左)と川崎誠 ©️文藝春秋

川崎 (ラーメンズの)小林賢太郎さん(48)の影響もめちゃめちゃ受けてますよ。そこからまた、みんなおかしくなったんです。松本人志さん(57)の後に小林さんがきて、地下芸人たちは「これはもっと尖っていくしかない」って刺激されちゃった。

――ラーメンズのようなシンプルな衣装を着てコントやるしかない、と。

川崎 そうそう。当時、みんなやってましたよね。そもそもアルコ&ピースもそうだしね。白いワイシャツ着たりしてね。

としみつ テレビに出なくても単独ライブで生活していけるみたいなスタイルも植え付けられた。ラーメンズはフライヤーから何から全部が格好良かったんです。美大を出てるとか、芸能人にファンが多いとか。

川崎 オレらも2人で見に行ったもんね。オレらはそういうのを、こじらせた残党なんです(笑)。

ラーメンズの小林賢太郎(左)と片桐仁

永野さんはサブカルの神であり、王様

――モダンタイムスさん、野田クリスタルさんたちが出ていたライブ以外にも、話題になる地下ライブはあったんですか?

川崎 その頃になると、芸人が主催するライブはいっぱいあった。脳みそ夫さん(41)が主催するデッカいライブが人気だったりもして。そういう地下ライブがいくつかあったんです。

としみつ ロフトプラスワンだと永野さん(46)もいますから。

川崎 永野さんはもうカリスマです。本当にすごかったですから。尊敬しかないですね。

としみつ 永野さんは伝説です。ロフトですごく前衛的なライブをやってました。あと、スギちゃんさん(47)が「おっぱい先生」っていうネタをやっていた時なんて、競馬で当たった140万円ぐらいを全部使い切って、有明コロシアムでフリーライブやったんですよ。

 あの頃、インディーズにいた芸人は、みんなそういうことをやっていた。その後、スギちゃんさんは「ワイルドだろ~?」でブレーク。永野さんも、(ハリウッドザコ)シショウ(47)も、ずっとロフトプラスワンでやってましたね。

ハリウッドザコシショウと一緒に(ラジオ『逆襲ザコシのチョゲチョゲPARK』公式Twitterより)

川崎 そのあたりは、「サブカル」というカテゴリーのカリスマでした。

としみつ インディーズとサブカルはちょっと違うんです。永野さんはサブカルの神であり王様。その場には、我々は一切呼ばれない。

川崎 当時、ロフト系のライブに出ること自体がすごかった。芸人も死ぬほど見に行ってるし、お客さんも満杯だし。

としみつ 俳優の斎藤工さん(39)も見にきてたりとかね。本当に映画のサクセスストーリーを地で行ったような方々ですよ。