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 さらに2019年から深刻化した韓日間の摩擦は、日本人アーティストの来韓を躊躇させることとなった。来韓公演の中止は、私個人としても実に残念だった。様々な日本人アーティストにインタビューして彼らの魅力を紹介し、また彼らが韓国でのステージやファンをどれだけ大事に思っているかを知らせる、貴重な機会だからだ。

 たとえば、2018年には、ロックバンド・Suchmosが訪韓した。仁川で開かれた「ペンタポート・ロック・フェスティバル」に参加するためだ。私のインタビューの中で、メンバーのHSUは、取材先のホテルの窓を指し、「今度はたぶん大変だろうけど、いつかソウルにも行ってみたい。ソウルはどの方向ですか」と、韓国に対する関心や好奇心を明かしてくれた。その日の公演では、ほとんどの観客がSuchmosを初めて見たにもかかわらず、ステージが終わる頃には、韓国人の観客の多くが歓声を送っていた。その瞬間は今でも生々しく頭に残っている。

 2015年、韓国、台湾、日本の3カ国を回るイベント「Far East Union」で訪韓したロックバンド・MONOEYESの細美武士は、私のインタビューに「両国の関係改善のために何かできることはないか、という考えからイベントを企画した」と述べ、両国の架け橋としての音楽の役割に触れた。細美をミュージシャンとしてだけでなく、人間として尊敬させられるインタビューだった。

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それでも人気のある日本人アーティストは?

 そんな状況の中でも、韓国の大衆音楽に影響を与えた日本人アーティストはいる。その代表格は、安室奈美恵だろう。

韓国でも実力派アーティストとして知られる安室奈美恵 ©getty

 韓国において、安室奈美恵は日本の音楽をよく知らない人でも一度は名前を耳にしたことがある歌手だ。韓国でも「実力派アーティスト」として認識されている。多くの韓国の芸能人の憧れの的でもあり、実際に韓国の女性ソロ歌手がスタイリングなどで参考にしている事例でもあった。

 さらに、韓国人に広く知れ渡っているアーティストといえば「ZARD」だ。

 ボーカル・坂井泉水の高い歌唱力と魅力的なルックス、老若男女問わず共感できる楽曲に、今でも彼女を応援する人が多い。彼女が主題歌を歌うアニメ『名探偵コナン』は韓国でも人気があるため、いまも若い世代が耳にしている。そのため、新たなファンが生まれ続けているのだ。誰にでも推薦できる「普遍的な日本音楽」の代名詞として、いつの間にか定着した。