伊丹十三監督の『お葬式』、滝田洋二郎監督の『おくりびと』、“葬儀”を題材にした映画といえばこの2本は外せないだろう。「漫画では?」と問われると思い浮かぶ作品はあまりない。そんな葬儀を題材にした意欲作が『終のひと』(双葉社/アクションコミックス)だ。
突然だった母親の死に戸惑う梵 孝太郎(そよぎ こうたろう)の前に現れたのは弔いのプロフェッショナル・嗣江 宗助(しえ そうすけ)。お金、親族、参列者、エンディングノート…何から手をつけていいかわからない梵を「葬儀社」の嗣江が導いていく。そこには命の終わりにしか見ることが出来ない物語があった。“葬儀”のヒューマンドラマを描いた本作。その裏側を作者・清水 俊さんに聞いた。
作品のきっかけは『コウノドリ』
――葬儀社を漫画の題材に選んだのはなぜでしょうか。
清水 「ダークなお仕事モノ」という依頼があり、一般的な葬儀社ではなく闇社会の人々の葬儀を題材にしたアウトロー路線の漫画を描こうと。その作品を進め始めたら普通の葬儀社を題材にした漫画にしようという話に変わっていきました(笑)。そこからしっかり取材をし始めました。
自分は元々、スポーツや格闘漫画を描くのや読むのが好きだったのですが、鈴ノ木ユウ先生の『コウノドリ』のアシスタントを経験したのが一つの転機になりました。第1話を読んで感動してアシスタントに応募したのですが、『コウノドリ』が命が生まれるドラマなら、自分は人が亡くなったあとの「死から始まる物語」を描いてみたいと思ったんです。
葬儀社を題材にした作品は少ないので、自分なりの形でドラマを描ければと考えています。また「葬儀社」で働く姿が格好良い男を、自分なら描けるな、と。